唐箕唄(宇佐市長洲)
☆沖の鴎にナーヨー 潮時ょ問えばヨ
 私や立つ鳥波にゃ問えエー ヨイヤーエー
☆波に問やまた荒瀬に問えと 荒瀬なければ波ゃ立たぬ
☆来るか来るかと雨戸に書けば 待てば甘露の雨が降る
☆カサを貰うたじゃ柄のないカサを 末はお医者の手にかかる
☆娘島田に蝶々がとまる とまるはずだよ花じゃもの
 ※カサ=梅毒のこと。傘と音が同じなので、柄のないカサと言っている。
メモ:唐箕とは穀物を入れてハンドルを回すと、風の力でゴミが吹き飛ぶという便利な道具。今でも使っている家庭もあり、資料館などでもよく見かけるものである。箕でふるってゴミを除いていた頃にくらべると作業効率は飛躍的に向上したようで、唐箕の「唐」は中国発祥という意味ではなく、たとえばハイカラなものに「南蛮」とつけたのと同じ感覚で、文明的なもの、最新のものという程度の意味合いで「唐箕」と呼んだと思われる。この唄は、唐箕を回すときに唄ったのだが、きっと他のときにも唄われた作業唄で、決して唐箕を回すときだけに唄ったのではないのではないかと思う。唐箕の作業内容から、かなり勢いのある、テンポのはやい節回し。

ものすり唄(宇佐市四日市)
☆ハー 臼はよしな臼ヤーレ やり木は堅木ヨー 中挽きゃ忍び妻
 アリャ 中挽きゃヤーレ 中挽きゃ臼の 中挽きゃ忍び妻
☆見下げしゃんすな泥田にゃ住めど きれいな蓮の花
 きれいな きれいな咲いて きれいな蓮の花
☆わしが唄えば空飛ぶ鳥も 休めて声を聴く
 休めて 休めて羽を 休めて声を聴く
メモ:下の句の頭3字を伏せておいて、返しのときには伏せずに唄うという形式である。長洲の「エビ打ち唄」も同様の形式であり、宇佐地方の作業唄によく見られるもの。「麦すり」でなく「ものすり」と言ったのは、当時は小麦をひいて粉にするだけでなく、粟その他いろいろなものをひいていたからだろう。

 

もみすり唄(宇佐市山本)

☆待つがよいかよ別れがよいかヨ 同じことなら待つがよいヨ

☆主は三夜の三日月様かヨ 宵にちらりと見たばかりヨ

 

米搗き唄(安心院町佐田)

☆米を搗き来た搗かせておくれ 野越え山越え搗きに来た

☆野越え山越え三坂越えて 遠いここまで搗きに来た

☆様と米搗きゃ中トントンと 糠がはぼ散りゃおもしろさ

☆わしに通うなら裏からござれ つつじ椿を踏まぬよう

☆つつじ椿は踏んでもよいが うちの親たち踏まぬよに

☆うちの親たちゃどうでもよいが 村の若い衆の知らぬよに

 

池普請唄「けんちゃん節」(宇佐市麻生)
☆ハー 桜三月ノーヤー あやめは五月(咲いてケンチャン 年とる梅の花)
 年取るノーヤー 年取る咲いて(咲いてケンチャン 年取る梅の花)
☆梅と桜を両手に持ちて(どちら梅やら桜やら)
 梅やら 梅やらどちら(どちら梅やら桜やら)
☆恋し小川の鵜の鳥ゅ見なれ(鮎を咥えて瀬を登る)
 咥えて 咥えて鮎を(鮎を咥えて瀬を登る)
メモ:池普請で土手を搗くときの唄。国東地方では池普請唄を「けんなん節」と呼ぶこともある。ケンチャンとは多分人名で、語呂を合わせるために挿入しただけで特に意味はないと思われる。たとえば筑豊地方の石刀唄に「ネーチャン」という言葉が挿入されるのと同じことだろう。この唄は昭和の中頃にレコード化されたが、その際に節回しが整えられ現在は一般に尺八などの伴奏で、2拍子のリズムで唄われている。元来は無伴奏で、基本的に2拍子だがところどころに3拍子が混じっている。

池普請唄(宇佐市四日市)
☆ヨヤセヨー ヨヤセでしばらく(ヤレショーヤレショー)
 ヨヤセヨヤセで(ヨイショコラヨーイヨナ アリャリャ コリャリャ)
 ホイ(ヤートセー ソラ ヨイショ コリャ ヨイショ)
☆合おか合わぬか合わせて 合うか合わぬか
☆合えば義経千本 合えば義経
☆合わにゃ高野の石堂 合わにゃ高野の
メモ:盆踊り唄か何かの転用と思われる。囃子言葉からみて、伊勢音頭の変化したものだろう。各節、3字を伏せている。順に「しばらくやろな」「合わせてみましょ」「千本桜」「石堂丸よ」であり、わざと伏せることを粋としたのだろうか。

池普請唄「棒打ち唄」(宇佐市横山)
☆ヤレ皆さん棒打ゅやろな(オイサオイサ)
 そうだよしっかりしゃんとやらにゃ(ヤーレショヤーレショー)
☆わしとあなたは相性じゃほどに しばらくつれあいましょか
☆竹に短冊七夕さまに 思いの歌を書く
☆船が出たぞな百二十七つ ござろかノー あの内に
☆ヨイト焼けたち山鳥立たぬ 可愛いものはない
☆ヤレあれ見よ八山が辻にゃ 松かさでノー 茶を沸かす
☆親の意見と茄子の花は 一つもノー 仇はない
☆ソリャ言うたぞ何からやろか やろとの思いもないが
メモ:盆踊り唄「蹴出し」の転用だが、唄い出しの1小節のみ3拍子になっていて、この唄に合わせて蹴出しを踊ると唄と踊りがずれてしまう。

池普請唄「土搗き唄」(宇佐市横山)
☆合おかヨ 合わぬか合わせて(ヤーレショー ヤーレショー)
 合おか合わぬか(ヨーイショー コラヨーイヨナー
 アリャリャー コリャリャ) ホイ(ヤートセー)
メモ:四日市の池普請唄と同種のもの。

池普請唄(土搗き唄」(宇佐市麻生)
☆お米ヨ 作ろにゃ(ヤーレショー ヤーレショ)
 コラお池が(ソーラ ヨーイヨナ アレワイサー コレワイサー)
 ハイ(ヤーレナットセー ソリャ ヨイサノサ コラ ヨイサノサ)
☆ここはじょうもと しっかりしゃんと
☆今年ゃ豊年 穂に穂が
☆道の小草に 米が鳴る

池普請唄「目搗き唄」(宇佐市横山)
☆アラ 待つがよいかよ ヤーレー 別れがよいか
 嫌なマタ 別れよ待つがよい(コラ ヨイショ コラ ヨイショ)
メモ:池普請の唄にも目搗きだの棒打ちだのいろいろあるが、作業工程に合わせて違う唄を唄っていたようだ。男性は土運びなどの仕事をし、搗き手はもっぱら女性だったそうだから、これらの唄を唄ったのも女性である。喉自慢、声自慢あるいは文句をたくさん知っている人が一人で唄ってほかの人が囃すこともあれば、順繰りに好きな文句で唄い継ぐこともあっただろう。

 

池普請唄「ずん搗き唄」(宇佐市山本)

☆ずん搗きゃナ ずん搗きゃナ 上がらにゃ下がらぬエンヤラエー

 (ヤレコノサンサノエー ソリャヨンヤサー ヨンヤサー)

○本郷二丁目の糸屋の娘(ハヤレショー ヤレショー)

 本郷二丁目の(ヤートコセーノ ヨーイヨナー アレワイナ コレワイナ)

 ハイ(サーナンデモセー ソリャヨンヤサー ヨンヤサー)

○姉は二十で妹は十九 妹は十九

 

池普請唄「千本搗き」(宇佐市長洲)
☆蝶々はサ 軽うて(アラヨイヨイ) アラくるくる廻るヨー
 (アラヤートコセー ヨーイヤナ アリャリャ コリャリャ ヤーヤトセー)
☆私ゃ悋気で気が廻る
メモ:伊勢音頭の転用と思われるが、字脚がかなり変化している。ヤートコセー以降の部分は斉唱したと思われ、共同作業の唄という特性上、もともとは7775の文句を唄ってヤートコセーと囃したものを、上の句、下の句それぞれでヤートコセー…と囃すように変化したのではないだろうか。

池普請唄「千本搗き」(安心院町)
☆ヨイショナー やりますエイトーナー エイトーナー エイトーナー
 イヤ隣にかけますエイトーナー エイトーナー エイトーナー
 イヤここらでこよしをかえせ ヨイヨーイ イヤハリ ヨーイヨイヨナー
 アリャリャ ホレ コリャリャ ホコ ヨイサノセー
メモ:伊勢音頭の変形。

 

池普請唄「千本搗き」(安心院町平ヶ倉)

☆アラ皆さん棒とりなされ(アラヨーイヨーイ) アラとったらヨー

 (ソーラヨーイヨナー ハレワイサ) ハイ(コレワイサ) ソコ(ハヨーイサーノセー)

☆とったら出かけちゃもぐる 出かけましょ

☆出かけたらしゃんと搗いちゃおくれ 搗かなきゃ

☆搗かなきゃたなかけまする たなかけ

 

地搗き唄(安心院町津房)
☆アーずんづきゃナー コリャずんづきゃナー 上らにゃ下がらんエンヤラエー
 (ヤレコノサンサノエー ソリャ ヤットンセー ヤットンセー)
☆この石ゃ この石ゃ 奈落の底まで
☆お家じゃ お家じゃ お家じゃ大黒

田植唄(宇佐市長洲)
☆田植小噺ゃエー 田主の嫌いヨー
 アラ唄うて植えましょヨー 品良くにヨー
☆五月五月雨に乳飲み子が欲しや 畦に腰掛け乳のましょ
 ※田植えの作業があまりきついので、もし私に乳飲み子がいたならお乳をやるのにかこつけて休憩できるのになあの意味。
☆五月五月雨に白足袋雪駄 あげな妻持ちゃ恥ずかしや
 ※皆で協力して田植えをしているときに、白足袋を履いて雪駄をひっかけて歩いているような女が妻だったら恥ずかしい。一種の嫉妬心があらわれた文句。
メモ:池普請唄とは異なり、田植唄はみんなで唄うというよりは、その場にいる唄が上手な人やいろんな文句を知っている人が唄い、まわりの人はそれを楽しみながらヨイヨイと囃したりしたようだ。池普請も田植も、どちらも共同作業だが、息を合わせる必要性の有無が決定的に異なる。

田植唄(安心院町)
☆田植小噺ゃ田主の嫌いヨ 歌うて植えましょ楽々と
☆唄い声する鼓の音する 間にゃ殿御の声もする
☆恋で九つ情けで七つ 合わせ十六様の年

 

田植唄(院内町原口)

☆腰の痛さやこの田の長さヨ 四月五月の日の長さヨ

☆田植小話ゃ田主の嫌い 唄うて植えなれ楽々と

 

女工唄(宇佐市四日市)
☆かわいがられた蚕の虫も 今は地獄の釜の中
☆製糸工女さんにどこ見て惚れた 赤いたすきで糸を引く
☆工女三日すりゃ弁護士ゃいらぬ 口の勉強がよくできた
☆蚕飼い上げてまぶしにあげて 早もお国に帰りたや
メモ:昔、四日市では製糸業が盛んで、出稼ぎの女工さんが多かった。作業の辛さから出た唄だろうが、工女三日すりゃ…の文句などなかなか機微のある文句も多い。

木挽き唄(宇佐市四日市)
☆ヤーレ 鋸は京前諸刃のヤスリ アー 挽くはお上の御用の板
 ※御用の板=お上に年貢として納める板
☆ヤーレ 御用の板とは夢にも知らぬ アー 墨をよけたはごめんなれ
 ※糸に墨をつけて、それをピンと張って木につけ、切るときの目安にした。それを外れて切ってしまったので「墨をよけた」と言っている。
☆ヤーレ 鋸もヤスリも番匠のカネも アー 置いてお帰れ 米の代
 ハーショロッキン ショロッキン 儲かる儲かる
 一鋸挽いてはあの娘のためだい 二鋸挽いては孫子のためだい

草刈り唄(宇佐市横山)
☆今宵さ行くぞと目で知らすれど 竹の継穂で気が付かぬ
☆思い山々どの山見ても 霧のかからぬ山はない
メモ:飼料にするための草を刈るときに、或いは草を刈りに行く道中、帰る道中でも唄ったのだろう。

草刈り唄(宇佐市麻生)
☆アー待つがよいかよ別れがよいかヨ(別れよ待つがよいヨ)
 別れが嫌なヨ(別れよ待つがよいヨ)
☆待つの辛さに出て山見れば(かからぬ山はない)
 かからぬ霧のヨ(かからぬ山はない)
☆声はすれども姿が見えぬ(深野のきりぎりす)
 深野の様は(深野のきりぎりす)
メモ:下の句の頭3字を返し部分以外では伏せているが、これは宇佐地方の唄によく見られる。曲調はずいぶん違うが、節が耶馬溪地方の盆踊り唄「キョクデンマル」に少し似ているような気もするので、何か関連があるのかもしれない。

 

海老打ち唄(宇佐長洲)
☆ヤーレ 打てど叩けどこの海老ゃはげぬヨ(打瀬のノーヤレ 涙海老ヨ)
 打瀬の 打瀬のこれがヨ(打瀬のノーヤレ涙海老ヨ)
☆鳥も通わぬ玄界灘は(ヤレそじゃ 通うて来る)
 ヤレそじゃ そじゃそじゃそれが(ヤレそじゃ 通うて来る)
☆風呂屋の看板にゃシャッチョコバイと書いて(うめうめ 温かったて)
 うめうめ うめうめ熱か(うめうめ 温かったて)
☆沖の鴎に汐時ゅ問えば(立つ鳥 波に問え)
 立つ鳥 立つ鳥 私ゃ(立つ鳥 波に問え)

☆豊前長洲のエビ打つ音が(ますぞえ 向こうが島)

 ますぞえ ますぞえ聞こえ(ますぞえ 向こうが島)

☆船が来たぞえ三ばい連れで(新造が わしが様)

 新造が 新造が中の(新造が わしが様)
☆波に問やまた荒瀬に問えと(なければ 波ゃ立たぬ)
 なければ なければ荒瀬(なければ 波ゃ立たぬ)
☆波に問うのはいと易けれど(白波ゃ 物言わぬ)
 白波ゃ 白波ゃ沖の(白波ゃ 物言わぬ)
☆寒の師走も日の六月も(勤めも せにゃならぬ)
 勤めも 勤めも辛い(勤めも せにゃならぬ)
☆七つ下がればわしゃ目が見えんど(殺した その咎か)
 殺した 殺した鳥を(殺した その咎か)
☆松の葉のよな狭い気を持つな(芭蕉葉の 気を持ちゃれ)
 芭蕉葉の 芭蕉葉の広い(芭蕉葉の 気を持ちゃれ)
☆思い出しゃせんか泣きゃせんか殿御(出しゃせぬ 泣きもせぬ)
 出しゃせぬ 出しゃせぬ思い(出しゃせぬ 泣きもせぬ)
☆月夜月夜にわしゅ連れ出して(捨てるか 闇の夜に)
 捨てるか 捨てるか今は(捨てるか 闇の夜に)
☆エビシャ小屋では色事ぁでけぬ(碁盤で 目が多い)
 碁盤で 碁盤で将棋(碁盤で 目が多い)
 ※エビシャ=海老舎。カチ海老の作業小屋。色事=男女の仲をさしている。将棋碁盤で目が多い=将棋盤も碁盤も目(格子の交叉点)が多いことから、人目が多いということをあらわしている。
メモ:下の句の頭3字を、返し部分以外では伏せるのが興味深い。長洲で盛んに生産された「カチ海老」の殻を剥ぐ作業のときに唄ったもの。大変に調子の良い唄で、威勢がよい。カッコ内の部分は斉唱したようで、残っている音源ではみんな思い思いの節回しで唄っていて、それが一種のハーモニーになっておりおもしろい。