一口口説(後に続けていくもの)

親は親竹子は樋の水 親の遣る先ゃどこまでも

 →親が薮なら私も薮よ 薮に鶯鳴くわいな

 →梅にゃ惚れても桜にゃ惚れな 梅に鶯来て止まる

 →梅にゃ粋あり松には操 竹なら割りたいわしが胸

 →割って見せたい胸三寸に 辛い浮世の義理がある

お前や加古川本蔵が娘 力弥さんとは二世の縁

 →縁がないなら茶山においで 茶山茶処縁処

 →茶山戻りは皆菅の笠 どれが姉やら妹やら

 →姉と妹に紫着せて どちら姉やら妹やら

木の根茅の根草の根分けて 訪ね逢いたい人がある

 →逢うて話しましょ小松の下で 松の葉のよに細々と

 →松の葉のよにこまい気は持たで 広い芭蕉葉の気を持ちゃれ

親のあるとき子のないときに お伊勢参宮してみたい

 →伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ 尾張名古屋は城で持つ

 →行たら見て来い名古屋の城は 金の鯱雨ざらし

沖のとなかにお茶屋を建てて 上り下りの船を待つ 

 →船は出て行く帆かけて走る 茶屋の娘は出て招く

 →娘招くなあの船待たぬ 思い切れとの風が吹く

 →思い切れとは死ねとのことか 思い切らりょか増す恋を

 →恋し小川の鵜の取り見やれ 鮎をくわえて瀬を上る

 →鮎は瀬にすむ鳥ゃ木にとまる 人は情けの下に住む

お夏どこ行く手に花持ちて 私ゃ清十郎さんの墓参り

 →お墓参りて拝もとすれば 森の夜烏 泣き明かす

 →向こう通るは清十郎じゃないか 笠がよう似た菅の笠

 →笠がよう似て清十郎であれば お伊勢参りは皆清十郎

親の意見と茄子の花は 千に一つの徒がない   

 →親の意見も一度や二度は 三度重なりゃ腹が立つ

 →腹が立つならねんねをおしな 寝ればお腹が横になる

竹に雀がしなよくとまる 止めて止まらぬ色の道

 →色で身を売るすいかでさえも 中に苦労の種がある

 →苦労するのはてんから覚悟 粋な亭主を持つからは

 →粋な鴉は夜明けにゃ啼かぬ 野暮な鴉が滅茶に鳴く

 →鳴くな鶏まだ夜は明けぬ 鳴けばお寺の鐘が鳴る

 →鐘が鳴るかや撞木が鳴るか 鐘と撞木の間が鳴る

 →鐘と撞木が流れて下る とかくこの川後生の川

 →後生願うなら宇佐よりゃ中津 中津寺町ゃ後生楽

 →盆の踊りは後生楽踊り 親の後生楽 出て踊れ

 →踊り踊るなら三十まで踊れ 四十過ぎれば子が踊る

 →踊り踊るならしなよく踊れ しなのよいのぬ嫁にとる

 →かわいがらされ我が子の嫁を かわい我が娘も他人の嫁

 →人の苦労を我が身に受けて そしてお前にする苦労  
 →九郎判官義経様は 静御前を連れて逃げ

 →連れて行かんせお供をいたそ お前ゆえならどこまでも

 →お前一人か連れ衆はまだか 連れ衆ぁ後から駕籠で来る

 →来るか来るかと川下見れば 川にゃ柳の影ばかり

 →川に立たせて待たしておいて 内でダツ編みゃ手につかず 
 →川に立つより立ち聞きしよと ごめんなされと寄るがよい

 →行きに寄ろうか帰りにしよか ならば行きにも帰りにも

 →行きに寄らんせ帰りは日暮れ あらぬ噂の風が立つ

 →立てば芍薬座れば牡丹 歩く姿が百合の花

 →花はいろいろ五色に咲けど 主に見返す花はない

 →泣いて暮らすも親ゆえ子ゆえ 回る浮世の糸車

 →淀の川瀬のあの水車 誰を待つやらくるくると

 →待つがよいかよ別れがよいか 嫌な別れよ待つがよい

 →別れ別れの釣瓶をつなぎ 丸く添わせる井戸の綱

 →添えば我が夫別るりゃ他人 なまじ大事は語られぬ

 →口にゃ一筋心にゃ三筋 辛い調子を合わす三味

 →三味は三筋に胡弓は四筋 私ゃあなたに一筋に 

 →あなた正宗わしゃ錆び刀 あなた切れてもわしゃ切れぬ

 →思い切れとは死ねとのことか 死なにゃ思いの根が切れぬ

 →糸は千本切れても繋ぐ 切れた情けが繋がれぬ

 →君が情けを仮寝の床の 枕片敷く夜もすがら

 →添寝した夜に添寝の夢は 添寝せぬ夜に廻したい

 →いつも月夜で夜が八月で 歳が二十五でおればよい

 →いつも月夜で盆なら良かろ 踊るふりして殿に逢う

 →逢うていてさえとどかぬ言葉 文に書かれる筈がない

 →通う千鳥に文託けて 便り聞かねば須磨の浦

 →表来たかや裏から来たか 私ゃ裏から思うて来た

 →今宵来るなら裏からおじゃれ 前は車戸で音がする

 →淀の車は水ゆえ廻る 私ゃ悋気で気が廻る

 →悋気らしいがよう聞かしゃんせ 愚痴になるのもお前から

 →お前松の木わしゃ胡桃の木 便り梨の木気は紅葉

 →なんぼ通うても青山紅葉 色のつかぬが是非もない

 →七つ八つからイロハを習い ハの字忘れて色ばかり

 →色のイロハの口紅つけて 宵は浮気な夕涼み

 →夏の夕暮れ船漕ぎ出して さしで涼みの隅田川

 →屋根の簾を下ろして急ぐ 粋な爪弾き水調子

 →吹けよ川風上がれや簾 中のお客の顔見たや

 →灯り障子に梅屋と書いて 客は鶯来てとまる

汽車は出て行く煙は残る 残る煙が癪の種

 →主の心は蒸気の煙 遠くなるほど薄くなる

今宵やよい晩嵐も吹かで 梅の小枝も折りよかろ

 →梅の小枝も折りかけやめた 後で咲くやら咲かぬやら

 →後で咲くやら咲くやら後で 後で咲くやら咲かぬやら

坂は照る照る鈴鹿は曇る 間の土山雨が降る

 →雨の降る夜は恋しさまさる せめて待つ夜は来たがよい

 →紺の前掛け松葉の散らし 松に来んとは腹が立つ   

様はよう来たよう来てくれた わしが思いが届いたか

 →様の来るときゃいつでもわかる 裏の小池の鴨が立つ

 →鴨が立つとは昔のことよ 今は濁りて泥鰌が住む

 →好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする 

様よ出て見よ氏神様よ みかん売り子が灯を灯す

 →みかん売り子じゃわしゃないけれど 道が難所で灯を灯す

 →道は難所じゃイヤなけれども 家が難渋で灯を灯す

思案橋から女郎屋が近い 行こか戻ろか思案橋 
 →思案橋から文ゅ取り落てた 惜しや二人の名を流す 
 →思案しかえてもま一度来ぬか 鳥も古巣に二度戻る 
 →思案しかえて古巣に戻れ まして枯れ木にゃ二度とまれ

搗けど小突けどこの米ゃ剥げぬ どこのお倉の底米か   

 →わしとあなたはお倉の米じゃ いつか世に出てままとなる

 →ままにならぬとお櫃を投げりゃ そこらあたりはままだらけ

盆の踊りと三日月様は 次第々々に丸くなる

 →丸い玉子も切りよで四角 物も言いよで角が立つ

生まれ山国育ちは中津 命捨て場は博多町
 →博多町をば広いとおっしゃる 帯の幅ほどない町を
 →帯にゃ短いたすきにゃ長い お伊勢編み笠の緒によかろ
 →お伊勢編み笠をこき上げて被りゃ 少しお顔を見てみたや
 →見ても見厭かぬ鏡と親は まして見たいのは忍び妻
 →忍び妻さん夜は何時か 忍びゃ九つ夜は七つ
 →七つ八つから櫓を押し習うて 様を抱く道ゃまだ知らぬ
 →様を抱くにも抱きようがござる 左手枕 右で締め
 →締めてよければわしゅ締め殺せ 親に頓死と言うておきゃれ
 →親にゃ頓死と言うてもおこうが 他人は頓死と思やすめ
 →思うてみたとて色には出すな お前若いからすぐ色に
 →色にゃ迷わぬ姿にゃ惚れぬ わしはお前の気に惚れた
 →惚れたほの字が真実ならば 消してたもれやわしが胸
 →胸にゃ千把の火を焚くけれど 煙あげねば他人は知らぬ
 →他人の女房と枯れ木の枝は あがるながらも恐ろしい

 →中津十万石おどいもんなないが おどや垂水のえびが淵

 →打てど叩けどこのエビゃはげぬ これが打瀬の涙エビ