尻取口説

生まれ山国育ちは中津 命捨て場はあの博多町
博多町をば広いとおっしゃる 帯の幅ほどないあの町を
帯にゃ短いたすきにゃ長い お伊勢編み笠の緒にこそよかろ
お伊勢編み笠をこき上げて被りゃ 少しお顔を覗いてみたい
見ても見厭かぬ鏡と親は まして見たいのはあの忍び妻
忍び妻さん夜は何時か 忍びゃ九つ夜は今七つ
七つ八つから櫓を押し習うて 様を抱く道ゃわしゃまだ知らぬ
様を抱くにも抱きようがござる 左手枕 右手で締める
締めてよければわしゅ締め殺せ 親に頓死と言うておきなされ
親にゃ頓死と言うてもおこうが 他人は頓死と思いはせぬぞ
思うてみたとて色には出すな お前若いからすぐ色に出る
色にゃ迷わぬ姿にゃ惚れぬ わしはお前の気に惚れました
惚れたほの字が真実ならば 消してたもれや私の胸を
胸にゃ千把の火を焚くけれど 煙あげねば他所の氏は知らぬ
ヤレ知るまい二人の仲は 硯かけごの筆のみぞ知る
筆と硯ほど染んだる中も 人が水差しゃ又薄くなる
薄くなってもまた磨りゃ濁る そばに寝ていりゃなおさら濁る
そばに寝ていりゃこっちを向けと 朝の別れを何としたものか
何としたやらこの四五日は 生木筏か気が浮きませぬ
生木筏で何の気が浮こうぞ 様が浮かせぬ気持ちじゃものを
様は切る気じゃわしゃ切れぬ気じゃ 割って見せたいこの腹の中
腹の立つときゃこの子を見やれ 仲のよいとき出来た子じゃないか
仲がよいとて人目にゃ立つな 人目多けりゃ浮名が立つよ
浮名立つなら立たせておきゃれ 人の噂も二月三月
三月四月は袖でも隠す もはや七月隠されませぬ
隠しゃ罪になる懺悔すりゃ消ゆる