お梅伝治口説

東西 東西 東西南北静まり給え 人の浮き伏し我が身の上は

たとえがたなき四池の里の お梅伝治がさよいこい衣
さてもお梅はいかなる生まれ 目許口許 顔立ちのびて ことに鼻筋 五三の器量
笑顔楊貴妃さてかみの上 心島田で人あいぐすね むかし松風 村雨などと
たとえがたなき四池の里の 草に育てし見目とも見えず お梅十四の冬籠りより
伝治心はおりおり心 ほうびき戻りにそれこなさんと 交わす枕の夜は長かれと
思いながらもただ恐ろしゅて 顔に紅葉はちりちりぱっと 恋の蕾の開いた夜は
人の色香も匂いの梅に 伝治心は鶯の鳥 つけて廻すが月夜も闇も
親の許さぬ比翼の契り かかるためしは あな気の毒や これのお申し伝治さん

お顔見るのも今宵が限り わけも言わずにただ殺してと 怨み涙は五月の雨に

伝治驚きこは何事と 様子語れとはや泣きじゃくり ほんにお前に知らせはないか

わしはそもじの兄八郎様が 妻にせんとて今日夕暮れに えこんおさまる吉日定め
眉を直せと鏡のいはい それと聞くより気も針箱の 底を叩いた私が心
愛しこなたと言うことならぬ 狭き袂に石拾い込み まもの池にと最期を急ぐ
伝治引きとめこれお梅どの どうも言われぬ嬉しい心 死ぬるばかりが心中でもなし
江戸や薩摩に行く身でもなし 同じ四池の水飲むからは 時節松風また転び寝の
忍び逢う夜もありそう梅の 沖の鴎や磯千鳥 それと聞くよりなどをして

やがて嫁入りしゅうことさ