孝子平助口説

ここは鴨川五台の付近 高くそびゆる石碑がござる これぞ名高い孝行息子
孝子平助さんの御物語 今を去ること百年余り 世にも稀なる孝行息子
父を失い母との二人 日毎夜毎に働くばかり 母は年取り足腰立たず
食事洗濯平助さん一人 汗と脂で働きぬけど どうせ逃れぬ貧乏世帯
他人の見る目も哀れな程に 雨の降る夜も風吹く朝も 骨身惜しまず田畑に山に
今日も明日もと暮らしのために されど平助さんな不平も言わず

心尽くして母をば守る 仕事励みて疲れし夜も

母をさすりて四方山話 他人に貰いし僅かな品も
母に与えて満足なさる 夏の夕べにゃ母をば背負い 近き川辺に下りて涼む
冬の雪降り冷たい夜は 雨戸障子の隙間の風に 火鉢炬燵の火も消え果てて
夜の夜長を震えて明かす そこで平助さん申することにゃ 「もうしこれいな母上様よ
風邪を召してはわしゃすみませぬ 炬燵代わりに私の体 何の遠慮もいらない程に
心行くまで温めなされ」 凍る両足しっかと抱え 胸に抱きて温め申す
月日変われど変わらぬ心 心傾け孝養尽くす 隣近所や村人さえも
「人の鑑じゃ手本にせよ」と 寄ると触ると平助さんの噂 噂高けりゃ城主に聞こえ
家来遣わし調査をなさる これぞ誠の孝子と讃え 数多村人集まる中で
褒美数々お褒めの言葉 孝子平助さんにお与えなさる