牡丹長者口説

国は奥州仙台のこと 牡丹長者の由来を聞けば 四方四面に蔵建て並べ
家は三階八つ棟造り 西と東に御門を開く 東御門は朝日の御門
西の御門は夕日の御門 前じゃ泉水 築山築いて 金魚 銀魚 鯉 鮒放し
裏にゃ百間乗馬場築いて 鹿毛と栗毛の駿馬が二頭 朝と晩とに曲乗りなさる
さても威勢は長者の暮らし 家の子宝若三人よ いっち兄子に嫁御の詮議
嫁御お里をどこよと聞けば 国は常陸の茨城郡 朝日長者のその一人姫
それを貰うて婚礼なさる 又も中子に嫁御の詮議 国は摂津の難波の国の
夕日長者のその一人姫 それを貰うて婚礼なさる 弟三男三郎殿は
未だ嫁御は相わからねど 京の都の御禁裡様で 太政大臣八重関白の
一人娘の鶴姫君は お年重ねて十三歳よ 時の帝の十二の妃
一の妃に供わりけれど 少し御身に落ち度が出来て 出来た落ち度で言い訳立てた
少し落ち度を何かと言えば 頃は三月 花見の頃に 親の許さぬ下紐解いた
それが御身の落ち度となりて うつろ舟にて島流さるる うつろ舟にて申するものは
縦が一丈で横三尺よ 黄たん黒たん唐黄を寄せて 木挽きゃ引く引く大工は刻む
切りつ刻みつうつろ舟造る つごりつごりは真鍮の金具 四方と天井はビードロ透かし
中の餌食が百日分で 蘇鉄団子にゃ上菓子つめる 蘇鉄団子と申するものは
一つ食ぶれば七日の餌食 それを沢山積み込みまして やがて鶴姫うつろに乗せる
金のエビ錠カチンと下ろし 壇ノ浦へと突き流された されど鶴姫位が高く
波に向うて揺られて走る そこの沖では十日も揺られ ここの沖では二十日も揺られ
何処の沖でも舟乗り達が 舟を漕ぎ寄せうつろを見たが 「九十九浦に足らざる故に
これを上ぐれば所が枯れる」 言うて又もや突き流された 揺られ揺られて百日余り
着いた所は鬼界が島よ 島の太夫さんその舟見つけ 錠をねじ切り拝見すれば
中に綺麗な姫君一人 お名を問うてもその名は言わぬ 何を問うてもただ泣くばかり
島の太夫が助けてあげて 家に連れ行く大事に仕え 海で揺られた百合姫様と
お名を改めお育て申す 三月三年相経つうちに 小野の小町か照手の姫か
かぐや姫よりまだ美しく それが世間の噂となりて 牡丹長者に早や漏れ聞こえ
長者館の三郎殿の 嫁に欲しいと遣いが下り 頃は霜月上己の三日
佳き日選んで婚礼なさる やれめでたや長者の口説 まずはこれにておさめます