座興唄

祝儀唄

俗謡「若松様」(久住町都野)

☆若松様よ 枝も栄ゆりゃ葉もしげる

☆仲立ち様よ 仲のよいよに頼みます

☆北山時雨 雨ばらばらと傘もてこい しずか二人のつれあいで

☆他人がともいやかくも言う 曇りなければ晴れてゆく

☆今宵さのお客 千夜一夜にゃかえませぬ

☆真菰の葦を よしに呼ばるし身ではない

☆新茶のめぐみ 摘んづ摘まれつおもしろい

メモ:近世調以前の字脚で、堅田踊りや日若踊りの「思案橋」、流行小唄「下関節」と同種のものと思われる。

 

俗謡「松づくし」(玖珠町)

☆こっちの座敷は祝いの座敷 唄え大黒囃せや恵比須

 一本目には池の松 二本目には庭の松 三本目には下がり松

 四本目には滋賀の松 五本目には五葉の松 六つ昔は高砂の

 尾上の松に曽根の松 七本目には姫小松 八本目には浜の松

 九つ小松を植え並べ 十で豊津の伊勢の松 この松は祝いの松とて

 情け有馬の松ヶ枝に 口説けば靡く相生の松 またいついつの約束は

 日を待つ 時待つ 暮れを待つ 伝授の松に願いを込めて

 福大黒はめでたいな おめでとうございます

☆こっちの座敷は祝いの座敷 裏に回れば池がある 表を望めば

 ひぐらし御門に五葉の松 一の枝には金がなる 二の枝には札がなる

 三の枝には大判小判がなり下がる 裏のお池の縁には

 上から鶴が舞い降りる 池から亀が這い上がる 鶴と亀との酒盛りで

 鶴が飲んでは亀に差し 亀が飲んでは鶴に差し 鶴と亀との酒盛りで

 ヤンサコラコラめでたいな おめでとうございます

メモ:地唄、端唄として著名な唄で、おそらく県内他地域でも同種のものが行われたのだろうがさして地域性がないため採集から漏れたのだろう。

 

俚謡「ヨイヤナ節」

ヨイヤナ(国東町)

 ☆祝いめでたの若松様よ 枝も栄ゆるその葉も繁る 繁る小枝に風が鳴る ヨイヤナ

 ☆これの座敷は祝いの座敷 鶴と亀との舞い遊び ヨイヤナ

ヨイヤナ(大分市坂ノ市)

 ☆今宵この座に来る嫁さんは 石の袂に金袖口よ

  金の袖口切れるとも 夫婦の縁の切れぬよう ヨイヤナ

 ☆肴々とおしゃんすけれど 何を肴に差し上げましょか この山奥の谷底に

  なすび千本植えおいた 今行てみれば花盛り それを肴と召し上がれ ヨイヤナ

 ☆これの座敷は祝いの座敷 鶴と亀とが舞を舞う ヨイヤナ

ヨイヤナ(庄内町阿蘇野)

 ☆あなた様とは音には聞けど 一つお座には今宵が初め

  これをご縁と頼みます ヨイヤナ

 ☆岩に立藤 手は届けども 人の花なら折ることならぬ

  見上げ見下げし見るばかり ヨイヤナ

 ☆阿蘇野よいとこ一度はおいで 春は椎茸わらびとり 夏は涼しき白水の

  秋は紅葉の紅の山 冬は降る雪 雪見酒 ヨイヤナ

 ☆あなた京都の禁裡がうちに お住いなされる御身分 私ゃその裾流れ川

  川の底ゆく恋や鮒 お手下げ引き上げ下しゃんせ ヨイヤナ

 ☆花はいろいろ数あるけれど 右近左近の花が咲く

  吉野の山にも数あるけれど あなたに見かえの花はない ヨイヤナ

 ☆帯になりたやあなたの帯に 昼はお腰に巻き立てられて

  夜はあなたに添い寝する ヨイヤナ

 ☆私ゃ以前は花にも咲いた 今は行っている他人の里に

  生まれ故郷が懐かしい ヨイヤナ

 ☆あなたのようなよい人は 唐天竺にも都にも

  大阪表にゃ咲く花も あなたにまさる花はない ヨイヤナ

ヨイヤナ(宇目町木浦内)

 ☆西も東もわからぬ娘 今宵あなたにあげますからにゃ

  万事よろしく頼みます ヨイヤナ

 ☆蝶よ花よと育てた娘 貰い受けます両親様よ

  すそにゃしませぬ大事にします ヨイヤナ

ヨイヤナ(緒方町)

 ☆これの御家はようできました 白い壁をば塗り果てて 床にかけたる掛け物は

  上から鶴の舞い遊び 下から亀が這い登る 鶴と亀との楽遊び ヨイヤナ

 ☆ここの御家を門から見れば 窓は金縁 銀すだれ お庭の小松は姫小松

  一の枝には米がなる 二番の枝には金がなる 三の枝にはささがなる

  上より鶴が舞い降りて 下から亀が這い上り 鶴が飲んでは亀に差す

  亀が飲んでは鶴に差す 鶴と亀とのお酒盛り ほろ酔い機嫌でお立ちなり

  この家繁盛と舞い遊ぶ これほどめでたいことはない ヨイヤナ

ヨイヤナ(緒方町小宛)

 ☆十二や三の小娘が 今宵初めて酌に出る 酌に出るほど恥ずかしさ

  肴々と好まれぬ なんど肴もござんせん 山は茂りて鳥とれぬ

  海は霞みて魚とれぬ この山奥の裏の田に 茄子千本植えおいた

  遅植えならば蕾なり 早植えならば花盛り これを肴と御酒あがれ ヨイヤナ

 ☆申し上げます板元様よ いろいろ品々取り揃え 味付け色付け切り刻み

  お手元見事に積み重ね まことに見事でございます ヨイヤナ

ヨイヤナ(大野町安藤)

 ☆お招き申したお客様 遠いところもおいといの ようこそおいで下された

  何ぞご馳走と思えども 山は深野で鳥とれず 柴北川の小魚は まだ幼子で

  あげられぬ 前に飾りし取りくさを どうぞゆっくりお上がりな ヨイヤナ

 ☆今宵亭主の御取持ちは 松にゃしば鯛 えび肴 下さる御酒は保命酒 ヨイヤナ

 ☆今日は都路 日柄よし まず婚礼の祝儀にて 鯔の肴で食べる御酒

  都で流行る保命酒 結んで解けぬのし昆布 縁はきりりと結ばんせ ヨイヤナ

 ☆二日の晩の初夢に 白い鼠が三つ連に また三つ連に六つ連に

  小判くわえて金運ぶ これがこの家の福の神 ヨイヤナ

 ☆君様お家の花君は きれいな鳥が三つとまる また三つとまる六つになる

  一羽の雀の言うことにゃ お家繁盛というてふける ヨイヤナ

ヨイヤナ(大野町酒井寺)

 ☆まず今日のお祝いに 床に掛けたる掛け物に 一の枝には米がなる

  二の枝には金がなる 三と言われしその枝に 金と銀との脂がふく

  下から亀が這い上がる 上から鶴が舞い降りる 鶴と亀とが舞を舞う

  何を舞うかと問うたれば 御家御繁盛と舞を舞う ヨイヤナ

ヨイヤナ(大野町桑原)

 ☆わしゃこの町で君さんを 見てホの字した そもじさん 春の焼野のほろろ雉

  雉も鳴かずば撃たれまい 私も見らずば惚れはせぬ 惚れたが無理と思うなら

  なぜにご器量に生まれたな ヨイヤナ

ヨイヤナ(千歳村舟木)

 ☆今日ここに来てみれば 御祝儀 御酒 御肴 御村方の若い衆

  御村 御作法に願います ヨイヤナ

ヨイヤナ(三重町川辺)

 ☆鶯が 鶯が 今年初めて伊勢参り 伊勢の町こそ広けれど どうぞ宿とる所なし

  十二の松の一の枝 松葉くい寄せ巣を作り 十二の卵を生みそろえ

  それが一度に雛となり 親もとろもに立つときは 金の銚子が七銚子

  銀の銚子が七銚子 中で酌する福の神 ヨイヤナ

ヨイヤナ(三重町芦刈)

 ☆一度この家に来てみれば 御盃のお喜び 再びこの家に来てみれば

  両親様もお喜び 三つ見事にございます 四つ嫁さんのご器量は

  牡丹 芍薬 百合の花 五つ出雲の神様が 結びしゃんした縁じゃもの

  六つ婿さんになる方は 七つ何事ありとても 八つやわらか当たらんせ

  九つこれまで来たほどに 遠いお里と思わんせ ヨイヤナ

 ☆祝いめでたの若松様よ 枝も栄ゆるその葉も繁る

  めでたいことはいつまでも ヨイヤナ

 ☆これの座敷は祝いの座敷 祝い半ばにこの家を見れば 空から鶴が舞い降りて

  庭から亀が這い上がる 鶴と亀との舞い遊び めてたいことはいつまでも ヨイヤナ

ヨイヤナ(荻町政所)

 ☆正月の 正月の 二日の夜の初夢に 白いねずみが三つ釣れに また三つ連れに

  六つ連れに 大判くわえて運び込む これぞ御家の御繁盛 ヨイヤナ

 ☆これな御家はよう建ちました 一に墨壷二に番匠曲 三は棟梁さんの胸の内 ヨイヤナ

 ☆今宵この家の御取持ちは 銀のしま台黄金の銚子 下さる御酒は保命酒 ヨイヤナ

ヨイヤナ(久住町有氏)

 ☆あなたおいでの御客様よ 臼杵佐伯の浦島までも

  いろいろ品々取り寄せて これをご馳走に召し上がれ ヨイヤナ

 ☆申し上げます板前様よ いろいろ品々取り寄せて

  色付け味付け飾り立て ほんに見事にできました ヨイヤナ

ヨイヤナ(久住町都野)

 ☆四海波風治まる御代は 心静かに身を持ちなされ

  君の恵みは有難や ヨイヤナ

 ☆鳥も通わぬ玄海灘を お出で下さる御客さまは

  末は鶴亀五葉の松 ヨイヤナ

 ☆さても見事な大船つつじ 秋の紅葉は黒岳山に

  心意気なら久住山 ヨイヤナ

 ☆朽網名物ヨイヤナ節は 愛し恋しの想いの丈を

  唄でお客に上げまする ヨイヤナ

 ☆稀なお客に差し上げまする 岩場育ちの薇煮〆

  釣れたエノハの塩焼きを ヨイヤナ

 ☆今宵飲む酒いつよりうまい 銚子からかな盃からな

  さてはあなたのお手からな ヨイヤナ

 ☆お出でなされし御客様に 何の肴も献立もない

  手元無沙汰で恥ずかしや ヨイヤナ

 ☆日頃下戸とも今宵は上がれ 唐の菊酒取り寄せました

  あなたに進上の酒じゃもの ヨイヤナ

 ☆これの小坪に小鳥が一羽 何とふけるか立ち寄り聞けば

  お家繁盛と唄います ヨイヤナ

 ☆私ゃ早子で背は低けれど 高いあなたに上げますからは

  お受け下されゆらゆらと ヨイヤナ

 ☆これの小坪に井戸掘りなされ 水の中から黄金が光り

  日毎夜毎に湧いて出る ヨイヤナ

 ☆あなた様とは音には聞けど 一つお座には今宵が初よ

  これをご縁と頼みます ヨイヤナ

 ☆初のお目見え思わず知らず 受けて返した盃なれど

  篤い情けが忘らりょか ヨイヤナ

 ☆君は空行く京ほととぎす 私ゃ野の鳥まだ色なれぬ

  時を教えて下しゃんせ ヨイヤナ

 ☆廻る月日を数えて暮らしゃ 時のゆくのは矢よりも速い

  共に花咲く春は来る ヨイヤナ

 ☆辻にちらりと火影が見ゆる こちのお客に違いはなかろ

  門に灯を出せお湯をくめ ヨイヤナ

 ☆親と親とのよい約束で 天赦万とよい日を見立て

  連れ越しなさる花の縁 ヨイヤナ

 ☆蝶よ花よと育てた娘 今宵さこちらに下さるからは

  さぞやお里は淋しかろ ヨイヤナ

 ☆淋しうござんす我が古里は 今日か明日かと指折り数え

  三日帰りを待つばかり ヨイヤナ

 ☆貰い受けたる白歯の娘 家に染むよに枝とりそえて

  八重に花々咲かせます ヨイヤナ

 ☆あの子両親懐育ち 西も東もまだ知りませぬ

  万事よろしく頼みます ヨイヤナ

 ☆もはやこちらの大事な嫁女 決して粗相にゃ扱いませぬ

  気遣いなさるな親御様 ヨイヤナ

 ☆こちのお家に入り来る嫁は 黄金枕に錦の布団

  未来長者と祝わんせ ヨイヤナ

 ☆朝日輝く息子を持ちて 夕日差し込む嫁とりなさる

  さぞや親さま嬉しかろ ヨイヤナ

 ☆あなたご近所お隣そうな まだもあの子は物慣れませぬ

  お手引き立てて下さんせ ヨイヤナ

 ☆一に親様二にご兄弟 三で早足の仲立様よ

  仲の良いよに願います ヨイヤナ

 ☆今宵嫁御の脇立様よ 椿山茶花いずれの花か

  まがいましたよお見事に ヨイヤナ

 ☆想い差しますこの盃を 一瀬二瀬は流れたとても

  交わすまいとのおしるしに ヨイヤナ

 ☆見初めましたる御君様の 下さる杯露散る程も

  外に漏らしはなりませぬ ヨイヤナ

 ☆鳥も古巣を振り返りゃせぬ 二度と越ゆるな在所の敷居

  ~さんを一途に頼らんせ ヨイヤナ

 ☆朽網名物阿弥陀ヶ池の 小杜若に石楠花

  山の城ではぬば桜 帝見惚れし蕎麦の花 ヨイヤナ

 ☆嵯峨天皇の陵を 中に取り巻く人里は

  花の朽網じゃないかいな ヨイヤナ

 ☆申し上げます板前様よ 山から獲るは鳥獣 海からあげし魚や貝

  野にも川にも馳せまわり 夜も日もわかず取り揃え 味付け色付け飾り立て

  ほんに見事にできました ヨイヤナ

 ☆さてもきれいな大船つつじ 秋の紅葉は黒嶽山に 男意気なら久住山 ヨイヤナ

 ☆さてもきれいな前嶽つつじ 枝は市むら葉は柚柑子の 花は竹田の滑瀬に ヨイヤナ

 ☆鶴は千年お万が妹 生まれ在所は高野山 弘法大師の御座所で それが真実誠なら

  弁財天を見るように くくり頭巾で忍ばんせ 中には金銀世に勝る ヨイヤナ

ヨイヤナ(直入町長湯)

 ☆これのお家はようでけました 金の柱に黄金の垂木

  四方隅には金すだれ ヨイヤナ

 ☆今日の喜びゃ皆のおかげ 私一人じゃどうにもならぬ

  ごゆるり呑んでくだしゃんせ ヨイヤナ

 ☆これの小坪に小鳥が一羽 何とふけるか立ち寄り聞けば

  御家御繁盛とふけります ヨイヤナ

 ☆若いあなたに女房のないは 笠に締め緒のないのと同じ

  早く女房を持ちなされ ヨイヤナ

 ☆女房持てとは私のことな 折に幸い渡りに舟よ

  似合いあるなら頼みます ヨイヤナ

 ☆似合あるなら頼まれましょが どこの誰方かお名指なされ

  間の仲立ちゃわしがする ヨイヤナ

 ☆わしに下さる肴がなけりゃ 胡椒や山椒や苦瓜などを

  油で炒めてくださんせ ヨイヤナ

 ☆五六七年凶作続き それにつけては難題続き

  油の買い置きゃござんせん ヨイヤナ

 ☆たとえ焼け石飛び出るとても あなた一人にゃ上げぬた言わぬ

  上げますまでは待たしゃんせ ヨイヤナ

 ☆私ゃこの頃あなたのことを 寝ては夢見る起きては思う

  思い忘れることはない ヨイヤナ

 ☆肌と肌とは思いもよらぬ せめて目と目が交わしたならば

  胸の恋路を語ろもの ヨイヤナ

 ☆あなた親切 誠ぞならば 野道 畦道 露踏み分けて

  私の方から通います ヨイヤナ

 ☆私ゃ野に咲く野菊の花よ 折れば今折れ主ないうちに

  花の香りのあるうちに ヨイヤナ

 ☆岩に立つ藤手は届けども 人の花なら折ることならず

  見上げ見下ろし見るばかり ヨイヤナ

 ☆月に群雲 柳に蛍 添うに添われぬ身がままならぬ

  出雲の神様うらめしや ヨイヤナ

 ☆君は御嶽 白雪様よ わしは裾野の流れの清水 

 解けて来なされ流れ合う ヨイヤナ

 ☆富士の高嶺の雪消ゆるとも 私とお前の涙の袖は

  乾く間もなし沖の石 ヨイヤナ

ヨイヤナ(竹田市植木) 

 ☆蝶よ花よと育てた娘 今宵この家に下さるからは

  粗相にゃしませぬ露ほども 気遣いなさるな親御様 ヨイヤナ

 ☆十七が 十七が 今宵この家に嫁に来た 四六二十四で子が出来て

  五六三十で去ね去ねと 無理に去ねなら去にますが 箪笥 長持 夜着 布団

  受けた枕も相添えて もとの十七にして返せ ヨイヤナ

 ☆十二や十三の小娘が 今宵お客の酌に出る 酌に出るさえ恥ずかしい

  時に肴と好まれて 何も肴の覚悟ない この道上の小畑に 茄子千本植えおいた

  遅植ながら花盛り これを肴に御酒あがれ ヨイヤナ

ヨイヤナ(竹田市玉来)

 ☆芋だねが 芋だねが 根にはせんじんの子を持ちて 茎丈伸んで葉を開き

  黄金の露をいただいて 子孫の栄える末繁盛 ヨイヤナ

 ☆御門外では鶉がふける 何と言うてふけるか立ち寄り聞けば

  御家繁盛と言うてふける ヨイヤナ

 ☆岩に立ち藤手は届けども 人の花なら折るこたならぬ

  見上げ見下げし見るばかり ヨイヤナ

ヨイヤナ(竹田市神原)

 ☆申し上げます姑御様よ まだもこの娘はもの馴れませぬ

  万事よろしくお願いします ヨイヤナ

 ☆申し上げます仲立ち様よ もしもこのこと縺れた時にゃ

  万事よろしく頼みます ヨイヤナ

 ☆あなたご近所お隣様よ 梅の若木を植えおくほどに

  散りゆくときは頼みます ヨイヤナ

 ☆さても見事な祖母山つつじ 枝は南郷に葉は熊本に

  花は野尻の川上に ヨイヤナ

 ☆もうやお立ちかお名残惜しや もしも道々雨など降れば

  わしが涙と思いなれ ヨイヤナ

 ☆これの座敷は祝いの座敷 祝い半ばに空見れば

  金銀混じりのよなが降る ヨイヤナ

ヨイヤナ(玖珠町森)

 ☆蝶よ花よと育てた娘 今宵あなたへお渡しします

  末はよろしく頼みます ヨイヤナ

 ☆愛し可愛いと育てた娘 今宵こちらにお貰いします

  大事というは出来ねども 家庭円満末永く ヨイヤナ

 ☆まれなお客に何がなご馳走 師走筍冬なる茄子

  天の川原の鯉と鮒 ヨイヤナ

ヨイヤナ(九重町桐木)

 ☆祝いめでたの若松様よ 枝もイナ 栄えりゃ

  ヨイヤ葉も茂る 何かのお末に続きましょ ヨイヤナ

 ☆これの小坪に小鳥が一羽 何をイナ ほけるかと

  立ち寄り見れば お家繁盛とほけります ヨイヤナ

 ☆これの座敷は祝いの座敷 弥陀のイナ 本願 ご先祖様が

  極楽浄土へ参ります ヨイヤナ

都路節(九重町桐木)

 ☆一つ一間に行てみれば 二親さまのお喜び 三つ見事にできました

  四つ嫁さんのご器量は 牡丹・芍薬・百合の花 五つ出雲の神様の

  結び合わせた縁じゃもの 七つ何事あるとても 八つやわらかに当たらんせ

  九つこれまで来たほどに とかく御縁と思やんせ ヨイヤナ

都路節(玖珠町森)

 ☆花嫁さまよ嫁さまよ 嫁となりたるその日から 殿御を大事に一筋に

  手取り足取り機嫌取る そうすりゃ殿御もお喜び 自ずと心が和みます

  とかくこの世は義理でもつ ヨイヤナー

 ☆一つ一間に行ってみれば 二人の親御さまお喜び 三つ見事にできました

  四つ嫁さんのご器量は 牡丹芍薬百合の花 五つ出雲の神様の

  お引き合わせの縁なれば 六つ婿になる人は 七つ何事あるとても

  八つ柔らかにあたりゃんせ 九つこれまで来たほどに 深いご縁と思わんせ ヨイヤナ

 ☆京の糸屋に娘やり 奥州組より貰われて 嫁入り支度せにゃならぬ

  嫁入り支度するからにゃ 金襴緞子が七箪笥 尺長帯が十二すじ

  これほど仕立ててやるほどに 去られて戻るな出て来るな 言えば娘の返答に

  日の本照らす天道さま 西が曇れば雨となる 北が曇れば雪となる

  その雪解けて水となる とかくご縁と諦め下しゃんせ ヨイヤナ

 ☆十二や三の小娘が 今宵初めて酌に出る 客から肴と望まれる

  唄さえ知らず舞知らず 浄瑠璃とてもなお知らず 裏のお池の鯉鮒も

  まだ若輩でとられまい 裏の畠になす植えて 遅植えならば花盛り

  花を肴と上がりゃんせ ヨイヤナ

ヨイヤナ(上津江村)

 ☆祝いめでたや若松様よ 枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる ヨイヤナ

ヨイヤナ(日田市)

 ☆これの座敷は祝いの座敷 弥陀の本願ご先祖様が 極楽浄土へ参ります ヨイヤナ

メモ:県内の内陸部で広く行われた祝儀唄で、沿岸部のションガエ節と並んで県内の祝儀唄・座興唄の二大勢力といえるものである。この種の唄は大分県・宮崎県・熊本県の鼎立する山間部で広く行われたもので、特に盛んに行われたのは大分県のうち朽網地方である。朽網地方は直入町・久住町・庄内町阿蘇野辺りである。この辺りのものは文句も婚礼用のものから恋の唄、屋敷普請その他多岐にわたっており、まさに生活に密着した唄である。座敷踊りの振りもつけられ、宴席には欠かせない唄だった。大分県のものは無伴奏で節の長短も様々だが、同種のものが熊本県においては三弦化し、殊に「球磨の六調子」が有名である。

 

俚謡「ションガエ節」

ションガエ(姫島村)

 ☆肴エー 肴と好まれて 何をエーナ トコドスコイ 肴にいたします

  ハーヨイサヨイサ これのナーエ 裏屋の小畑に 茄子をナ トコドスコイ

  千本植え並べ ハーヨイサヨイサ 遅蒔き種かな花盛り これをエーナ

  トコドスコイ 肴に御酒まいれ ションガエ

ションガエ(杵築市納屋)

 ☆ハーヨイサヨイサ ションガエでやろな ハヨイサヨイサ 私の弟の千松は

  扇のオイショ 要に池掘りて ハヨイサヨイサ 池のぐるりにゃ田をつくり

  その田のオイショ 稲のマーエ できようは ハヨイサヨイサ

  一鎌刈りては二千石  二鎌オイショ 刈りてはマーエ 四千石 ハヨイサヨイサ

  三鎌になりては積りなし その末オイショ 取りてはマーエ 飯に炊く

  ハヨイサヨイサ 飯に炊いたら富士の山  酒にオイショ つくればマーエ

  泉酒 ハヨイサヨイサ その御酒あがる方々は 延命オイショ 息災末繁昌

  ションガエ アラ一つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆ハーヨイサヨイサ ションガエで貰うた ハヨイサヨイサ 白鷺が 白鷺が

  今年オイショ 初めて伊勢参宮 ハヨイサヨイサ 伊勢ほど広き町なれど

  一夜のオイショ 宿をば借りかねて ハヨイサヨイサ 浜の小松の二の松に

  柴萱オイショ 刈り寄せ巣を組んで ハヨイサヨイサ 十二の卵を生み揃え

  十二がオイサ 一度に目が開いて ハヨイサヨイサ 親諸共に発つときは

  黄金のオイショ 銚子をくわえさし ハヨイサヨイサ また白銀の盃で

  飲めやオイショ 大黒唄えや恵比須 ハヨイサヨイサ 中で酌とる福の神

  ションガエ アー祝うて三献も一つやらんせ

 ☆ハーヨイサヨイサ ションガエでやろな ハヨイサヨイサ 網舟の 網舟の

  筒々オイショ 立てたる三蓋の松 アヨイサヨイサ 一の松には銭がなる

  また二のオイショ 枝には末がなる ハヨイサヨイサ 三とも云われしその枝に

  鶴とオイショ 亀とが毎晩とまる ハヨイサヨイサ 何と云うてとまるかその鳥は

  お舟ヨイショ ご繁昌と云うてとまる ションガエ 祝え 祝え 祝え 祝え

 ☆ハーヨイサヨイサ ションガエでやろな ハヨイサヨイサ 盃が一つなり

  さすべきオイショ お方はあなたなり ハヨイサヨイサ ただ薄紅葉に八重桜

  今咲くオイショ 花にて差しましょな ハヨイショヨイショ 思い出しては

  さわちとなりて ア何の何の 何の織目の薄物で ションガエ

 ☆ハーヨイサヨイサ ションガエでやろな ハヨイサヨイサ これの御家の棟の木に

  白いオイショ 鼠が三つ連れて ハヨイサヨイサ また三つ連れて六つ連れて

  塵をオイショ くわえて金運ぶ ハヨイサヨイサ 金をくわえて銭運ぶ

  これがオイショ お家の福の神 ションガエー

ションガエ(津久見市保戸島)

 ☆サーヨイサヨイヤサー ナナヨイヤサー 嬉しやナー めでたや若松様は 枝もナ

  チョイトセ 栄える葉も繁る ションガエ アラ一つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆正月二日の初夢に 白い鼠が三つ連れて また三つ連れて六つ下る

  こんな御家の御屋敷で 小判くわえて金運ぶ ションガエ アーめでたいめでたい

 ☆しょんがえで貰うた 千秋万歳思うこた叶うた 末は鶴亀 五葉の松

  ションガエ アーめでたいめでたい

 ☆しょんがえで貰うた めでためでたや めでたきことが重なりて 飲めや大黒

  唄えやエベス 中で酌する福の神 ションガエ アーめでたいめでたい

 ☆三番叟が 三番叟が舞いくる 御手に鈴を持ち 左の御手に扇を持ちて

  チリリヤタラリでヤーオンワ はるは滝の水 日が照るとも 御家繁盛と

  舞い納め ションガエ アーめでたいめでたい

ションガエ(佐伯市木立)

 ☆祝いナー めでたの若松様は 枝も栄える葉も茂る ションガエ

  ア一つは不吉じゃも一つぁよかろう

 ☆枝が栄えてお庭が暗い 枝をおろそや一の枝 ションガエ

  ア二つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆一の枝よりゃ二の枝よりも 三の小枝が邪魔をする ションガエ

ションガエ(米水津村竹野浦)

 ☆エーヨヤサヨヤサ ヨーヤサノサ 祝いめでたな若松様よ ヨヤサヨヤサ

  ヨーヤサノサ 枝も栄える葉も繁る ションガエ

 ☆ションガエで戻せ これな御家はめでたな御家 柱白金 けた小金

  垂木 棟の木ゃ総銀で 東切り窓 げにすだれ 朝日長者と名を上げる

  ションガエ 二献は御祝いじゃ 三献祝うて

 ☆ションガエで戻せ 三番叟が 三番叟が 舞い立つ袖には鈴を持ち ヤレ

  チリリヤパラリヤ ヤーホンワー 鳴るは滝の水 日は照る照ると

  御家御繁盛と舞い納め ションガエ まずおめでとうございます

ションガエ(鶴見町梶寄浦)

 ☆ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ 祝いヨー めでたの ドッコイセー

  若松様よ イヤー ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ 枝もイヤ

  栄えて葉もイヤ 茂る ションガエ イヤ一つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ あなたヨー 百まで ドッコイセー

  わしゃ九十九まで イヤー ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ ともにイヤ

  白髪の生えイヤ るまで ションガエ イヤ二献は樽だい 三献合わせて

 ☆ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ よやさヨー よやさで ドッコイセー

  今飲む御酒は イヤー ヨイサヨイヤサ ヨイトマカセ 八代もイヤ

  重ねておめイヤ でたく ションガエ

サンヤリ(鶴見町大島)

 ☆祝いエ めでたの ヨイセ若松様よ 枝もヤレコラセ ソレ栄えて葉も茂る

  ションガエ その枝が栄えた エーイヨイサヨイヤ まず今日のナー ヨイセ

  御祝いは 万吉 ヨイセ 日とナ 日をとりて ドッコイマカヨイ 床のナ

  前のナ ヨイセ 掛け物にゃ御酒を ヨイセ 供えてめでたさよ これが

  ヤレコラセ ソレ この家の福の神 ションガエ その枝が栄えた

  エーイヨイサヨイヤ 新造ナー つくりて ヨイセ 今朝おろし 十二社

  ヨイセ 船魂祝い込み ドッコイマカヨイ さて艫には大黒 舳に恵比須

  中にヨイサ 乗るのが福の神 これが ヤレコラセ ソレ この家の宝船

 ☆これなる御家は ヨイサ おめでたな御家 ドッコイマカヨイ

  サテ 柱は白金けた黄金 垂木 ヨイセ 屋根ふしゃ総銀で ドッコイマカヨイ

  サテ 東は切り窓 軒すだれ 庭には ヨイセ めでたな井戸を掘りて

  水の ヤレコラセ ソリャ 湧くほど金が湧く ションガエ

 ☆野にもナ 山にも ヨイセ 子は持ちおかれ 万の ヤレコラセ

  ソレ 蔵より子は宝 ションガエ

 ☆お前百までわしゃ九十九まで ともに白髪の生えるまで ションガエ

 ☆正月目を出す桑の木で 春は栄えて森となる さて森下には何が住む 鶴と亀とが

  舞いを舞う 何を舞うかと立ち寄り見れば 御家御繁盛と舞いを舞う ションガエ

  一番叟や二番叟や三番叟や 舞なる袖には鈴つけて チリリヤタラリヤ

  ヤーホンハ 鳴るは滝の水 日は照る 御家御繁盛と舞い納め ションガエ

ションガエ(上浦町津井)

 ☆祝いエー めでたの若松様よ ハーヨイサヨイサ 枝も栄える ソジャソジャ

  葉も繁る ションガエー アー 一つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆正月エー 正月エー 正月 チョイトナ 二日の初夢に ハーヨイサヨイサ

  白毛の鼠が三つ連れて また三つ チョイトナ 連れてナー 六つ連れて

  ハーヨイサヨイサ 御家御繁盛と ハーソジャソジャ 金運ぶ ションガエ

  アー 二つは不吉じゃも一つやらんせ

 ☆三番叟がエー 三番叟がエー 舞い鶴 チョイトナ 袖には鈴を持ち

  ハーヨイサヨイサ ヒリリヤタラリヤ ヤーハンハー 照るは チョイトサ 滝の水

  日は照る照ると ハーヨイサヨイサ 御家御繁盛と アーソジャソジャ 舞い納め

  ションガエ アー 三献重ねて御苦労 御苦労

祝い唄(上浦町)

 ☆祝えめでたの若松よ ヨイサヨイサ ヨイトマカセ 枝も栄えりゃ葉も繁る 代々も

  チョイトナ 栄えておめでたや ションガエ 一つは不吉だ も一つやらんせ

 ☆これなお家はおめでたや アーヨイサヨイサ ヨイトマカセ 一つとなった

  二人が二つ チョイトナ 夫婦仲よく幸せに アーヨイサヨイサ ヨイトマカセ

  三つ見事な嫁を取り 四つ嫁御の器量のよさ 五つ出雲の神様が

  六つ結び合わせた縁じゃもの 七つ何事ないように 八つ柔らかしてしゃんせ

  九つこの家に来た嫁御 十で殿御の機嫌取り ションガエ

  二つは不吉じゃ も一つやらんせ

 ☆三番叟エー 三番叟エー 舞い出る チョイトナ お手には鈴を持ち

  アーヨイサヨイサ ヨイトマカセ チリリヤタラリヤ ヤーホンヤー 鳴るは

  チョイトナ 滝の水 日は照るともに ヨイサヨイサ ヨイトマカセ 御家の

  チョイトナ ご繁昌と舞い納め ションガエ 三坤祝うて四坤で首尾よく五坤で五祝

メモ:国東半島から南海部地方まで、県内の沿岸部で広く行われた祝儀唄である。沿岸のションガエ節と内陸のヨイヤナ節とが県内の祝儀唄・座興唄の二大勢力といえるだろう。このションガエ節は格が高く、特に杵築市納屋など漁村では盛んに行われ、この唄が出るまで他の唄は出せなかった。一般に3節を組にして、お座についた一同が正坐し、手拍子を打ちながら威儀を正して唄うものである。この点、ヨイヤナ節とはまた違った性格を帯びており、いきおい文句のバリエーションも限られてきている。

 

俚謡「長持唄」

祝言道中唄(宇佐市四日市)

 ☆蝶よ花よとヨー 育てた娘 今日を限りに嫁となる

 ☆照る日曇る日ヨー 風の日も まめで働けよく動け

 ☆舅にゃ笑顔でヨー よく仕え 泣くときゃ婿どんの腕の中

 ☆今度帰るときゃヨー 初孫を だっこして帰れよ これ娘

 ☆今度帰るときゃヨー 初孫を 背負うて帰れよ これ娘

長持唄(中津江村合瀬)

 ☆アー 祝いナーヨー めでたや若松様よ

  枝もナーヨー 栄える エー葉も繁るナーヨー

 ☆アー 箪笥ナーヨー 長持受け取りまする

  道中ナーヨー 無事にと エー届けますナーヨー

 ☆アー 蝶よナーヨー 花よと育てた娘

  今日はナーヨー 他人の エー人となるナーヨー

 ☆アー 生みのナーヨー 父上母上様よ

  長のナーヨー お世話に エーなりましたナーヨー

 ☆アー 箪笥ナーヨー 長持白木じゃあれど

  中のナーヨー お衣裳は エー綾錦ナーヨー

 ☆アー 所望だナーヨー 所望だと道ゃはかどらぬ

  家じゃナーヨー 婿さんが エー待ちかねるナーヨー

 ☆アー 箪笥ナーヨー 長持受け取りました

  奥のナーヨー 座敷に エーおさめますナーヨー

長持唄(中津江村栃野)

 ☆ハー 箪笥ナーヨー 長持ゃ ハー お渡しまする

  末々ナー よろしく ハー 頼みますナーヨー

 ☆ハー 箪笥ナーヨー 長持ゃ ハー 受け取りまする

  二度とナー この敷居ゃ ハー 越しゃせぬナーヨー

 ☆ハー 蝶よナーヨー 花よと ハー 育てた娘

  今日はナー 晴れての ハー お嫁入りナーヨー

 ☆ハー 船はナーヨー 入船 ハー 帆を巻き上げて

  ハー 恵比須ナーヨー 大黒 ハー 舞い込んだナーヨー

メモ:婚礼の祝儀唄である。農村・漁村においては、平成に入ってもなお一部で「村まわり」などが行われる例もあったが、昨今は全く廃絶しつつある儀礼である。

 

俚謡「くげ唄」(前津江村柚木)

☆こちの屋敷はヤー ヤーエー祝いの座敷 鶴と亀との舞い遊ぶ

 鶴と亀とはヤー ヤーエー何して遊ぶ 末は繁盛と舞い遊ぶ

 若松さまよヤー 枝もサーエー 枝もナー 栄ゆる葉も茂る

メモ:くげとは「公家」かまたは「公卿」の転訛だろうが、同種のものは隣接する熊本県阿蘇地方においても行われたようだ。おそらく格の高い唄なのでそう呼んだのだろう。

 

俚謡「祝い唄」(宇佐市横山)

☆酒もよう飲む きさくな男 金のないのが玉にゃきず

 

俚謡「祝い唄」(本匠村山部)

☆祝いめでたの若松様よ 枝も栄ゆる葉も繁る 代々も重ねておめでたさ

☆これな座敷はめでたな座敷 鶴と亀とが舞い遊ぶ 代々も重ねておめでたさ

 

俚謡「サンヤレ」(蒲江町西野浦)

☆祝いめでたのヨ アサンヤー 若松様よ ア枝もヨ アサンヤー 栄える

 ア葉も茂るヨ エー 一つは不吉じゃも一つやらんせ

☆野でも山でもヨ アサンヤー 子は持ちおきゃれヨ ア万のヨ アサンヤー 蔵より

 ア子は宝ヨ アー 二献は足るまじ三献重ねて これがお家はヨ アサンヤー

 めでたのお家ヨ ア鶴とヨ アサンヤー 亀とが ア舞い遊ぶヨ

メモ:ションガエ節ほどの勢力はないものの、この唄も海部地方の沿岸部、漁村においては盛んに行われたものである。採集はされていないが蒲江町以外の地域でも行われた。

 

俚謡「大黒舞」

恵比須まわし(蒲江町西野浦)

 ☆舞い込んだ 舞い込んだ 恵比須さんが 舞い込んだ 恵比須 三郎兵衛

  佐衛門之丞が 生まれた月日はいつよと問えば 正月十日に

  エッサエッサと誕生なされて 沖を眺むりゃ 大鯛小鯛の大漁で 夕べ生まれた

  エビの子の餌を ポンと投げ込みゃ バックリ喰うて 大けな大鯛 釣り上げて

  鯛の浜焼き サワラの刺身 弁天さんのお酌で 杯も重なりゃ

  恵比須さん酔ってきた 酔ってきた 沖は大漁 陸は繁盛 みかん繁盛と

  まずはこれにて 舞い納めまする

大黒舞(大田村永松)

 ☆めでたいな めでたいな サー大黒さんが舞い込んだ 一で俵をふんばえて

  サー二でにっこり笑った チョーイショコ 四つ世の中よいように

  サー五ついつものごとくなり 六つ無病息災で サー七つ何事ないように

  チョーイショコ 八つ屋敷をふみ広げ サー九つ米蔵うっ積んで

  十で十隈の伊勢の松 サー伊勢が栄えりゃ葉も茂る チョーイショコ

  これほどめでたいことはない サーこれをこの家に納め置き

  千秋万歳万々歳 サーいつの世までもめでたくて チョーイショコ

 ☆めでたいな めでたいな サー大黒さんが舞い込んだ それほどめでたいお宅なら

  サー二度と重ねてほめやんしょ チョイーイショコ 如月山の楠を

  サー八寸八分にわき落とし チョーイショコ サー千石船を造りあげ

  それにお米を積み込んで

メモ:さして地域性はないが、大田村辺りで行われたものは「国東大黒舞」として稀にステージ民謡・レコード民謡として取り上げられることがある。国東半島においては正月の門付としての大黒舞が比較的近年まで残っていた。

 

俚謡「万歳」(大田村)

☆一々億々 千秋御万歳と褒め奉れば 春木がおもしろや まことにめでとう候いける

 年の始めに年男が ゆずりはを口にくわえて 五葉の葉とを手に持って

 さて南天に突っ立って 源氏が門を開き 谷の真砂は嶺を招じ 嶺の真砂は谷を招じ

 ちらりさがりと春日の宝 昔神代の時代 高天が原に権現 浅間が岳に文殊 申酉正月

 天皇天は 下には日光 伊勢皇大神宮のお宮進は 北が高うて南下りのお屋敷で

 下り坂を築きあげて 飛騨の匠 竹田の番匠 堺の大工が言い交わし 一本の柱は磯大黒

 二本の柱は日天月天 三本の柱は三又大権現 四本の柱は四天王権現

 五本の柱は牛頭天王 六本の柱は六社大権現 七本の柱は七福神と

 お祝い申せばこれまためでとう候いける 八本の柱は八幡大菩薩 九本の柱は熊野の権現

 十本の柱を十社権現と 褒め奉ればまことにめでとう候いける

 

俚謡「鰤浄瑠璃」(米水津村)

☆明らかに 始まる御世はつづむつの ホーホケキョーの啼く声に 春先駆けて梅が香や

 霞たなびく野も山も 海原近く大寄せに  横島かけて下り来る 鰤の若魚の大群は

 すわやと見やる元山は  鵜の目 鷹の目 もらぎん目 うちわ片手に大肌ぬき 

 前後をはかる一刹那 長ハエ近きちりめんは 嵐が魚群 白なりの 

 頭をさっと上ぐるやいなや ヨーと一声 網子ども はり棒引き抜きもやい解き 

 どんと投げ込む樽と石 しばらく逆網も碇打ち 真網も立てさししおせたり 

 やれもたらわれたの丁発止 うちわの骨の粉になるまで  あかみは紫 唐紅

 引き寄せ巻き寄せ二番網 三番網や四番網  えびすもにっこり笑い顔 大黒天も槌舞や

 布袋和尚や寿老人  毘沙門天は鳴る皮の 三味線抱えて伊勢音頭

 伊勢は津でもつ浦前は  鰤 シビ 鰯 ニベ 鰹 大鯛 小鯛 ひめこ鯛

 魚の数々引き寄せて  大判小判円札や 子孫繁盛徳若に 治まる御代こそめでたけれ

 

俚謡「めでたいこと」(九重町)

☆めでたいことを祝うなら 鶴は千年亀万年 とうぼうさんは八千年

 浦島太郎は九千年 土と人形は変わらせん

 

俚謡「イヨコノ節」(姫島村)

☆これのイヨコノ 座敷は アーヨイヨイ これの座敷は祝いの座敷

☆鶴とイヨコノ 亀とが アーヨイヨイ 鶴と亀とが舞い遊ぶ

☆これをイヨコノ 肴に アーヨイヨイ これを肴に御酒あがれ

メモ:これは「五尺手拭」とか「佐渡と越後は筋向い」などの文句で著名な流行小唄で、同種のものは全国的に広く行われた。県内では津鮎踊りの「五尺」があるが、おそらく座興唄としては他地域でも唄われていたと思われる。

 

俚謡「ひざくずしの唄」(宇目町木浦内)

☆ところは高砂の 尾上の松を臼に切り その枝々を杵にとり 岩いの餅を搗きそめて

 黄な粉つけたらなおよかろ アリャドンドンドン コリャドンドンドン

メモ:祝儀唄ではあるも「ひざくずし」とあるように、いくぶんくだけたものである。おめでたい文句から入って、半ばより「牡丹餅顔」(高い山)に切り替わるところにおもしろさがある。高い山の唄は全国的なものだが、県内では堅田踊りのそれが知られている。

 

俚謡「三三九度」(大田村)

☆四海波静かにて 国もおさまる時津風 枝を鳴らさぬ御代なれや

 あいに相生の松こそめでたかりけれ げにや仰ぎても ことも愚かやかかる世に

 住める民とて豊かなる 君の恵みはありがたや ありがたや

☆長生の家にこそ 老いせぬ門はあるなるに これも年ふる山住の 子代のためしぞ松蔭の

 岩井の水は薬にて 老いをのべたる心こそ なおゆく末も久しけれ 久しけれ

☆長き命をくみて知る 心の底の曇りなき 月の桂の光そう 枝を連ねてもろともに

 朝夕なるる玉の井の 深き契は頼もしや 深き契は頼もしや

 

俚謡「鯛しばり大漁祝い唄」(杵築市納屋)

☆アーダシタコラ ダシタコラ 明日はサーヨーエー アーダシタコラ ダシタコラ

 よい凪 沖まで出すな アーヨイサヨイサ 陸の藻ばたで コリャまたためる

 ヨーイトナー ウンエーイエーイホー ヨーイヤマカセノ セーンホージャ

 ユーヤレコラ ドッコイドッコイ

☆アーダシタコラ ダシタコラ ためたサーヨーエー アーダシタコラ ダシタコラ

 ためたよ 杵築網ゃためた アーヨイサヨイサ 今朝もためたか コリャまたためた

 ヨーイトナー ウンエーイエーイホー ヨーイヤマカセノ セーンホージャ

 ユーヤレコラ ドッコイドッコイ

メモ:ションガエ節と同様、祝いの座で唄われたもの。

 

俚謡「鏡割り祝い唄」(九重町八鹿酒造)

☆エー 酒が出る出る樋の口あおぐヨ アーヨイショヨイショ

 明日は座敷に花が咲くヨ アーヨイショヨイショ

☆エー うちの奥さん金箱据えてヨ アーヨイショヨイショ

 ござるお客は福の神ヨ アーヨイショヨイショ

☆エー 清酒八鹿おさまる御代はヨ アーヨイショヨイショ

 末は鶴亀 五葉の松ヨ アーヨイショヨイショ

☆エー 鶴が舞いますこの家の上にヨ アーヨイショヨイショ 商売繁盛と舞い上がるヨ

 アーヨイショヨイショ よかろじゃないか ヨイヨイノ ヨイショヨイショ

メモ:この唄はCMにも使われたので、県内ではわりとよく知られている。

騒ぎ唄

俗謡「大津絵節」

中津名物(中津市)

 ☆中津名物水道の水に 遅うなりゃお嬶が八百屋の焼饅頭 蕎麦が太平で

  醤油が佐田屋 酒は貝屋の白酒で 医者が村上 役者が托原で ほしゃが渡辺

  伯楽東浜 湯屋ネブカ 相原大根に小松の胡瓜に 宮永かぼちゃ 島田蓮根

  蛎瀬の一分餅 出小屋の三角 小祝姐さんざっこいらんか つばなつばな

  金谷女に下辺男鏝は桜町 風の吹かぬにお鼻が落ちました

 ☆中津近くに名高いものがある 大貞放生会に八日羅漢 お取越は十月四日市

  宇佐の万灯篭で約束し 内を抜け出でただ一人 餅は久々姥の川端で

  雨は降り出す 笠町じゃなけれども 濡れて富永 植野で暮れて 風呂敷の着物

  着替えるそのうちに 犬丸さんからピヨピヨ吠えられ 堅い私が助平となりました

大津絵(大田村)

 ☆大阪を立ち退いて 私の姿が目にもてば 借り駕籠に身をやつし

  奈良の旅籠や三輪の茶屋 五日 チャンチャン 三日に日を送り

  二十日ばかりに四十五両 使い果たして二分のこる

  (欠落:金ゆえ大事の忠兵衛さん、科人にならしゃんしたもみんな私ゆえ)

  さぞやお腹も立ちましょうが 因縁づくじゃと諦めくださんせ

大津絵(挾間町挾間)

 ☆おいおい親爺どの その金こちゃに貸してんか 与市兵衛はほら びっくり仰天し

  いえいえ金ではござりませぬ 娘お軽がしてくれた よいよいの握り飯

  さてもしぶとい親爺めと 抜き放し 何の苦になきひとえぐり 命と金とが

  女に分かれる二つだま

大津絵(蒲江町西野浦)

 ☆太鼓持ちだよ 芸者だよとて かみにこりょとてこい

  かみかと思うてつまより寄せて 床の間枕で鼻唄うとうて そのまま高いびき

  正直に金がなる 鼓太鼓は締めで鳴る 茶屋の二階で三味が鳴る

  銚子のかわりなりお手が鳴る 昼に箪笥のかねが鳴る 清姫ゃ蛇になる

  佐用姫は石になる 忍びゃ忍ぶほど辛くなる コラ 会うて別れが辛くなる

  夜明けの烏が お寺の鐘となる アコラコラ

 ☆女とは何事も とかく浮世は結ばりょに もの云うとても柔らかに

  いつも柳の気を持ちて 嫌がる風が吹くとても コレ わが持ち前とは諦めて

  両親夫の居らせども 露ほどに 最後のささきや りょうがすり

  さてまたお客さんにご挨拶 笑顔作りてにっこりと アコリャ

 ☆わしとお前さんでナー 算盤のつぶ 二七十四で投げ止めて

  二九の十八でようよう所帯持つ 四六二十四でこの子ができて

  五六三十や五八四十で コレ 今更出よとは胴欲な それほど私がお嫌なら コラ

  もとの二七十四の かわらけ島田にして戻せ コラ 赤い髪かけ島田のときなら

  どこへなりとも いずこへなりとも 勝手に嫁となる コラコラ

 ☆親父どの その金こちらに貸してくれ コレ 云えば与市兵衛がえらく仰天し

  いえいえ金ではござんせん 娘お軽が来てくれた ソレ 用意の逃げる前

  どれどれお酒になされましょ さてさてしぶとい親父どの なぜや泣く

  何の苦もない糸えぐり ヤーコレ 金と金とのおんない 別れ命の二つだま

 ☆茶屋のナー だんいかり腰打ちかけてナー エー あちらこちらと見回す

  その時に 哀れな話が耳にゃ入り それ聞く夜の吉三さん 綾の袴にきぬべ織り

  指して行くのが鈴が森 あまたの見物押し分けて お雪お雪と声をかけ

  煙の中からお雪こそ 吉三さんかな懐かしや 短いこの世で添わいでも

  永のナー コリャコリャ 冥土でヤレサンノ 添いましょうや

大津絵(久住町都野)

 ☆大阪を立ち退いて 私の姿が目に立たば 借駕籠に身をやつし

  奈良の旅籠や三輪の茶屋 五日三日と日を送る 二十日あまりに四十五両

  使い果たして二分残る 金より大事な忠兵衛さん 落としましたも私ゆえ

  さぞまたお腹も立ちましょが 因縁づくじゃと諦めくださんせ モヤモヤ

 ☆秋の夜に一人寝る 目もあいかねてほっとりと 襟に顔入れ物思い

  硯引き寄せ書く文は どう書きゃ思うトイチに届きましょうかと 目に涙

  傾城は誠あらば ねぐら離れし比翼塚 笑うて辛いは数知れず

  泣いて嬉しき世は偶さかよ 情け知らずの親方は お部屋で無理な強意見

  急かれりゃ義理でもなお積もる 切られよか 地方裁判所の裁きでも

  惚れた三字に義理の二字 間夫という字はなかなか裁かれぬ

 ☆千両のぼりいなの川 やかた夫婦で胸はやるせない 数多見物衆のその中を

  押し分けて 東西東西金子二百両 いな川殿御贔屓とや

  聞くよりいな川景色をかえて 鉄が嶽をば土俵の隅に生めとる

 ☆おおいおおい定九郎 この金お前に貸してやろ 定九郎はびっくり仰天し

  いえいえ金はいりません 盗みはしたけれど もういらぬと逃げ仕度 やれやれ

  よくない定九郎と金渡しゃ 何の気もなく膨れづら 貸すと借らぬ押し合い二人連れ

 ☆どうしょにもこうしょにも こうなりゃ二人の縁じゃもの たとえ山中三軒家でも

  竹の柱に茅の屋根 寝ながら月日を拝むとも 三文切らずを通につけても

  お前さんと一緒に添われる縁なら ちっとも厭やせぬ

朽網名物(久住町都野)

 ☆朽網名物アミダが池に 小杜若に蕗 根芹 背丈つつじに石楠花

  見下ろす角の蕎麦の花 山の城ではネバ柳 嵯峨の天皇みささぎの

  さっぱりおされぬ菊桐の 花の都じゃないかいな

日田づくし(前津江村大野)

 ☆恋の豆田を夜立ちして すまなき隈の川原町 ドッコイ

  朝の下井出大部を越えて 恵良や千丈の浮橋を 心細くに渡り来る

  笠を片瀬古 杖につき 行けども平地は中川原 中大山

  前に小平は野瀬部にて アラヨイショ ヨイショ ヨイショ

  石坂通ればよいところで 日を暮る鎌手に宿をとる キタコラサッサ

メモ:大津絵節のうち、座興唄として唄われたものを集めた。定九郎やら梅川など全国的に著名な文句に交じって、地域性の高い文句も多くみられる。ここにあげたものは、そのほとんどが三弦を伴わずに手拍子で唄われたと思われるが、大津絵節は間合いが詰まっているので唄い易かったのだろう。中津市では盆踊り唄としても唄われたが、それは盆踊り唄の項で紹介している。なお安心院町辺りでも一連の盆踊りの中に「大津絵」があるが、それは「大津絵節」ではない。おそらく踊り方からの呼称で、唄自体は「エッサッサ」の類か「らんきょう坊主」の類である。

 

俗謡「さのさ節」

1、さのさ

 さのさ(大田村)

  ☆花づくし 山茶花 桜か水仙か 寒に咲くのが梅の花

   牡丹 芍薬ネ 百合の花 ヨイショ南天 菊の花

  ☆あの花は 好きな花じゃが ありゃよその花 あの花 野山に咲いたなら

   一枝折りてネ 床の間に 差してしおるまで眺めたい

  ☆楠は 兵庫で討ち死にするときに その子正行呼びよせて

   その名も高き湊川 忠臣楠公の墓と書いてある

 さのさ(上津江村上野田)

  ☆人は武士 気概は高山彦九郎 京の三条の橋の上

   はるかに皇居をネ 伏し拝み 落つる涙も加茂の水 サノサ

 さのさ(上浦町浅海井)

  ☆花ならば 国の土産に一枝欲しや あげたい心はあるけれど

   今は蕾でネ あげられぬ 咲いたらあげましょ初花を サノサ

2、書生節

 書生節(挾間町挾間)

  ☆書生さん 好きで虚無僧するのじゃないが 親に勘当され試験に落第し

   仕方ないから尺八を 吹く吹く吹く間に ドッコイショで門に立つ

   シャレチョラ ゲショバイ

  ☆三味線の 二三は切れても一ゃ残る 銀主が金貸しゃ利が残る

   うちのカカ叩き出しゃ子が残る 春の焼け野は根が残る

   シャレチョラ ゲショバイ

3、鴨緑江節

 いかだ流しの唄(日田市)

  ☆朝霧の 中を流るる アノ三隈川 流す筏は アラよけれども ヨイショ

   関や荒瀬にヨ つなぎおくヨ 明日はマタ 若津にゃ着きかねる

 中須賀名物(宇佐市中須賀)

  ☆中須賀で 最初目につく豊中の 製紙工場 アラ煙突よ ヨイショ

   続いて見ゆるはネ 三州校で ヨイショ 辺りいちめん玉ねぎよ チョイチョイ

メモ:さのさ節の系統のものを集めたが、このうち2番の「書生節」は同種のものが山国谷一円で盆踊り唄として広く流行した。それは盆踊り唄の項で紹介したので、ここでは省略している。おそらく、当該地域においても座興唄として唄われることもあっただろうし、その他の地域でも戯れ唄として唄う人はあったと思うが、節回しや文句に地域性が薄いため採集されなかったのだろう。

 

俗謡「コチャエ節」

コチャヤレ節(山国町)

 ☆ぼんさん忍ぶにゃ闇がよい 月夜には アラ 頭がぶうらりしゃあらりと

  コチャ 頭がぶうらりしゃあらりと(コチャヤレ コチャヤレ)

 ☆お前待ち待ち蚊帳の外 蚊に食われ アラ 七つの鐘の鳴るまでは

  コチャ 七つの鐘の鳴るまでは(コチャヤレ コチャヤレ)

彦山節(耶馬溪町深耶馬)

 ☆僕のおものが太いとて コリャ彦山の 講堂の柱にゃなりゃすめえ

  コリャそっちにゃ寄れ こっちにゃ寄れ

 ☆私のおものが広いとて コリャ吉岡の 洗濯だらいにゃなりゃすめえ

  コリャそっちにゃ寄れ こっちにゃ寄れ

坊さん忍ぶ(久住町都野)

 ☆坊さん忍ぶにゃ闇がよい 月夜には 頭がぶうらりしゃあらりと

  コチャ 頭がぶうらりしゃあらりと

 ☆坊さん袂から文が出た 文じゃない お経の書物といいつのる

  コチャ お経の書物といいつのる

ぼんさん忍ぶ(玖珠町)

 ☆ぼんさん忍ぶにゃ闇がよい 月夜には 頭がぶうらりしゃあらりと

  コチャ 頭がぶうらりしゃあらりと コチャヤレ コチャヤレ

 ☆ぼんさん袂から文が出た 文じゃない 書物の切れじゃと言い募る

  コチャ 書物の切れじゃと言い募る コチャヤレ コチャヤレ

 ☆お前さん知らずに戸を叩く お愛しや 軒端の露に打たれたろ

  コチャ 軒端の露に打たれたろ コチャヤレ コチャヤレ

 ☆コチャヤレ節は流行らねど 今ここで 流行るは博多の紺絣

  コチャ 流行るは博多の紺絣 コチャヤレ コチャヤレ

メモ:「お江戸日本橋」の文句で著名な「コチャエ節」が郷土化したもので、ここにあげた以外にも堅田踊りの「ぼんさん忍ぶ」があり、盆踊り唄の項で紹介している。

 

俗謡「伊勢音頭」

伊勢音頭(前津江村大野)

 ☆日田で名高い大原神社 見事な見事な百段を 右に下れば豊前ぶ

  左に竜宮の飾り立て も少し行けば御池端 御池にかかった反り橋に

  ほんに前から浮いてくる も少し行けば新茶屋で お泊りなら泊りゃんせ

  お風呂もちゃんちゃと沸いている 行灯障子も張り替えて ついでに畳の表替え

  お寝間のお伽がいるなれば 十七なりと八なりと 白歯が嫌ならカネつけて

  望み次第に アンサコラコラ 金次第 イヤコラコラ ヤートコセーノ

  ヨーイトナー コラ アレワイサー コレワイサー サーサーナンデモセー

  お伊勢にゃご祈祷 ご祈祷

伊勢音頭(蒲江町西野浦)

 ☆ここのナー ご家の神棚見れば アリャーヨイ きれいな小鳥が三つとまる

  また三つとまれば六つになる その鳥なに鳥問うたなら 紫檀 黒檀 松の鳥

  麝香の扇をくわえ来て 一分小判と云うてほける 扇の要にいぜをせき

  いぜの廻りに稲植えて なんとこの稲ゃよくできた 一鎌刈れば千石の

  二鎌刈れば二千石 三鎌も刈ればつもりない つもりない米ストンとトンと

  搗き白め ままに炊いては富士の山 酒に作れば泉酒 この酒頂戴する人は

  西や東に倉を建て 末はナー コレコレ 長者とヤレサンデ なりまするヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆白鷺が 白鷺が 年の初めに伊勢参宮 アリャーヨイ 外宮内宮と参拝し

  お伊勢の町にて帰り来て お伊勢の町ほど広かれど 一夜の宿をとりかねて

  浜の小松の二の枝で 柴くず寄せて巣を組んで 十二の卵を生み揃え

  十二が一度に目を開き 親もろともに立つときは 黄金の銚子に酒をいれ

  また白金の杯に ゆらりと映えて中見れば 四方四間に倉を建て

  末はナー コレコレ 長者に ヤレサンデ なれまするヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆ここのナー ご家はめでたなご家ナ アリャーヨイ 日の出御紋の五葉の松

  一の枝には札がなる 二のまた枝には金がなる 三なる小枝にゃ 銚子杯なりしぼれ

  上からお鶴が舞い下がる 下から亀が浮き上がる 鶴と亀との酒盛りは

  鶴が飲んでは亀にさし 亀が飲んでは鶴にさす その鶴お亀の唄うには

  ご家ナー コレコレ ご繁盛と ヤレサンデ 舞い遊ぶヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆美々津ナー まき出す細島の アリャーヨイ 日は延べ延べと延岡の

  島の浦には名所あり 蒲江港にゃ寄りもせず 仙崎鼻をば横に見て

  入津湾にと漕ぎ入れて 黒き黒島地黒島 縦にあれども横島の

  鶴は棲まねど鶴御崎 関権現に参拝し 関で名高い二軒茶屋 茶屋の娘の弾く三味は

  一を上げては二を下ろし 三でナー コレコレ お客のヤレサンデ 機嫌とるヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆娘が嫁で抱かれナ アリャーヨイ 貰い受けられやる約束 嫁入り道具の仕立てには

  櫃や箪笥や長持ちや 鏡台 針箱 はさみ箱 これほど仕立ててやるほどに

  行ったら帰るな出戻るな 言えば娘の申すには ととさんかかさんそりゃ無理じゃ

  西が曇れば風となる 東が曇れば雨となる 雨と風との斗いにゃ

  千石積んぢょる船でさよ 向こうナー コレコレ 向こうならヤレサンデ あと帰るヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆正月ナー 二日の初夢に アリャーヨイ 一富士二鷹三なすび 梅に鶯春は花

  信心感謝のなごやかさ 恵比須大黒福の神 神のナー コレコレ

  ご威徳ヤレサンデ ありがたやヨ ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ

  アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

 ☆正月ナー 二日の初夢に アリャーヨイ 如月山の楠木を 切りて倒して板にして

  大工にかけて船にして 新造つくりて今下ろす 宝が島に行くときは

  千里の海をひと飛びに 万里の海をふた飛びに 宝が島に乗り着けて

  思う宝を山と積み 元のナー コレコレ 港にヤレサンデ 乗り着くるヨ

  ササ ヤートコセーノ ヨーイヤナ アリャサ コリャ コレバイサデ ヤレサンノセ

伊勢音頭(弥生町堤内)

 ☆寒さで鳴くか 妻呼ぶか 寒さで泣かぬ 妻呼ばぬ 明日はお山のおしし狩り

  かくらは狭し 子は多し どうせこの子は取られます 助けくだんせ山ノ神

  この子が成人したなれば 連れてナーエ 参詣いたします

  ジャットコサーノ ヤーレコリャセー

メモ:座興唄、騒ぎ唄として唄われた伊勢音頭を集めたが、みな字余りの文句になっている。県内では伊勢音頭の流行がすさまじかったとみえて、大野地方・直入地方では盆踊り唄として盛んに行われたが、それらは節回しもある程度郷土化している。また、伊勢音頭の変調として山国谷から日田・玖珠方面の「千本搗き」、天瀬町辺りの「六調子」などの盆踊り唄もあるが、すべて盆踊り唄の項で紹介したのでここでは省略する。また宇佐地方・国東地方で盛んだった池普請唄でも伊勢音頭の転用の例がかなり見られるが、それは項を改めて作業唄として紹介する。

 

俗謡「川竹」

川竹(久住町都野)

 ☆桂川 お半は背に長佐衛門 肩にかけたる振袖は 

  もはや七月岩田帯 締めたが無理ではないかいな

 ☆闇の夜に ちらりと見えしはありゃ何な 月か星か蛍か

  蛍虫なら手にとまれ お月さんなら拝みたい

 ☆有明に ともす油は菜種ゆえ 蝶が焦がれて逢いに来た

  もとを正せば深い仲 死ぬる覚悟で来たわいな

 ☆床の間に 生けし花をば御覧なれ たとえ根元は切られても

  互いの水が通うなら 花が咲こうではないかいな

 ☆床の間に かけし三味線御覧なれ 今は二人は本調子

  たとえどなたの意見でも 撥が当たらにゃ切れはせぬ

 ☆剃刀は 先は切れても根は切れぬ 逢わせて下され床屋さん

  逢わせてあげるは易けれど わしが逢わすりゃ切れ易い

 ☆淀川の 巡ることではなけれども とかく浮世は恋ばかり

  縁と時節があるなれば 巡り会うではないかいな

 ☆裏の田に 茄子を植えて意見する なるかならぬかこりゃ茄子

  私ゃなる気であるけれど 声かけられにゃならにゃせぬ

 ☆白鷺を 烏と見たのも無理はない 一羽の鳥を鶏と

  葵の花も赤く咲く 雪という字も墨で書く

川竹(上浦町浅海井)

 ☆床の間に 活けし花をばご覧なれ たとえ根元は切られても

  互いに水が通うなら 花が咲くではないかいな

 ☆今朝もまた 脱ぎし羽織のほころびを 縫うておけとは気が強い

  好かぬ私に縫わしょよりゃ 好いたあの人に縫わしゃんせ

メモ:端唄で、地域色が極めて薄い。他地域でも唄う人はあったのだろうが、採集から漏れている。

 

俗謡「炭坑節」(大田村)

☆月が出た出た金色の 宮さん恨むよ来年の

 今月今夜のこの月が ぼくの涙で曇らせる テケレッツノパッパ

☆月が出た出た東山 恋も未練も振り捨てて

 三条河原に散る花火 あれは月形半平太 テケレッツノパッパ

メモ:テケレッツノパという囃子言葉には天中軒雲月の「浪曲くずし」の影響が感じられる。もちろん、大田村以外でも戯れ唄として唄ったところはとても多いのだろうが、地域色が薄く流行小唄の域を出ていない。

 

俗謡「ラッパ節」

1、ラッパ節

 ラッパ節(国東町中田)

  ☆今鳴るラッパは三時半 あれに遅れりゃ重営倉

   またの日曜がないじゃなし 離せ軍刀に錆がつく トコトットントン

  ☆向こう通るは芸者さん 三枚重ねに五つ紋

   あれでも金出しゃ転ぶのか 人は見かけによらぬもの

 ラッパ節(緒方町辻)

  ☆京の金閣寺を拝見なしたかネ ご覧じなしたか拝見なしたか楠木天井

   一枚板ではないかいな 「床の」柱は南天菊の花

  ☆今鳴るラッパは七時半 それに遅るりゃ重営倉

   またの日曜がないじゃない 「離せ」軍刀に錆がつく

2、ナッチョラン節

 ナッチョラン節(三光村諌山)

  ☆青島よいところと誰が言うた 後ろハゲ山 前は海 ドッコイショー

   尾のない狐が出るそうな 僕も二三度 だまされた ナッチョラン

 ナッチョラン節(大分市八幡)

  ☆高崎山より見下ろせば イカ釣る船が二三艘 イカは釣れずにフグが来た

   そこでフグめの言うことにゃ 私みたよなドタフグを 釣って肴にしょうよりは

   ほかにアジ・サバないじゃない ナッチョラン

メモ:炭坑節と同様、流行小唄程度の戯れ唄なので採集されていないだけで、他地域でも広く唄われたはずである。

 

俗謡「自転車節」(野津原町辻原)

☆チリリンリンと出て来るは 自転車乗りの時間借り 曲乗り上手と生意気に

 両手離した洒落男 あっちに寄っちゃ危ないよ こっちに寄っちゃ危ないよ

 危ないよと言ってる間に そらこけた

 

俗謡「琉球節」(挾間町谷)

☆琉球と鹿児島が地続きならば 一夜通いがしてみたい

 シタリヤヨメヨメ シンニヨタヨタ シテガンガン セッセー

☆琉球へござるなら草鞋はいてござれ 琉球は石原 小石原

 シタリヤヨメヨメ シンニヨタヨタ シテガンガン セッセー

メモ:琉球節とあるが鹿児島や関西の花柳界で盛んに唄われた流行小唄である。大分県内でも広く唄われたのだろうが地域性はなく、戯れ唄の類。

 

俗謡「どっこいせ節」

どっこいせ節(佐伯市青山)

 ☆わしの思いと長瀬の原はヨ ハヨイトサッサ ほかに木はない松ばかり

  イヤドッコイセノセー アジャヨカロー

 ☆西野長池にゃ蛇が住むそうなヨ ハイヨイトサッサ 怖い池じゃげな嘘じゃげな

  イヤドッコイセノセー アジャヨカロー

 ☆黒沢来さんは菜穂の花じゃヨ ハヨイトサッサ 舞い来る蝶々が皆とまる

  イヤドッコイセノセー アジャヨカロー

どっこいせ節(玖珠町)

 ☆どっこいせどっこいせは田舎の角力よ こけつまろびつ

  またもどっこいせ どっこいせのアラよかろ サノサッサ

どっこいせ節(上津江村)

 ☆どっこいせどこいせは田舎の角力ヨエ アヨイショ こけつまろびつまたもどっこいせ

  コラどっこいせの千助さんの脚の長さ ちょんがりちょんがりやって行きょらしたばい

 ☆どっこいせがいやさで三味線枕エ アヨイショ 親の意見も三下がり

  コラどっこいせの千助さんの脚の長さ ちょんがりちょんがりやって行きょらしたばい

 ☆三味の音がする太鼓の音もする アヨイショ 間にゃ様ちゃんの声がする

  コラどっこいせの千助さんの脚の長さ ちょんがりちょんがりやって行きょらしたばい

メモ:一般に「四季の唄」「春は嬉しや」で知られている俗曲の元唄「どっこいせ節」が郷土化したものである。上記のうち、佐伯市と玖珠町のものは元唄の名残があるが、上津江村のものでは「どっこいせ節」の体裁を取りながらもその実は、「春は嬉しや」の節に近くなっており、元唄の変化の過程が洗われていて興味深い。

 

俗謡「ヤッコラヤノヤ」

十銭節(挾間町谷)

 ☆米が十銭すりゃヤッコラヤノヤー 唐米ゃ九銭ナー千代さん

  辛抱せにゃいかれんと書いてある サイナ トッチンチンリン トッチンチンリン

メモ:真っ黒け節の変調「やっこらやのや」「のう千代さん節」が郷土化したもの。元唄の文句は、松や櫻などの漢字を分析する文句がよく知られており小林旭のレコードも出ているはず。挾間では「十銭節」となっているが、この文句の「唐米や九銭」の「くせん」に「食わせん」とかけたものである。

 

俗謡「御所のお庭」

御所のお庭(九重町)

 ☆御所のお庭にサッサ 右近の橘 左近の桜 トッチリチリチリ

 ☆雪がちらちら 子供は喜ぶ大人はかじける 犬めは飛んで出る

 ☆渡辺の綱の 兜をひっつかまえて舞い上がる 太刀引き抜いて腕を切る

御所のお庭(玖珠町)

 ☆御所のお庭にサッサ 右近の橘左近の桜 サーサ吹く吹くダーラダラ

 ☆右大臣左大臣 緋の袴を穿いた官女たち

 ☆雪はちらちら 子供は喜ぶ大人はかじける 犬の目は飛び散る

 ☆雪を集めて 箒でもって掃くやら 屋根の雪は竿でさす

 ☆渡辺の綱の 兜をとっつかまえて舞い上がる 太刀引き抜いて腕切る

メモ:これは騒ぎ唄として全国的に行われたもので山村豊子などのレコードが残っているが、近年は取り上げられることが稀になった唄である。文句が微妙に変化しているものの、さして地域性は感じられない。

 

俗謡「三下り」

わが恋(上津江村上野田)

 ☆わが恋は 細谷川の丸木橋

  渡るに怖き 渡らねば 思うお方に逢わりゃせぬ

 ☆わが恋は 住吉浦の夕景色

  ただ青々と松ばかり 待つは憂いもの辛いもの

わが恋(久住町都野)

 ☆わが恋は 細谷川の丸木橋

  渡るに怖し渡らねば 想うトイチに逢わりゃせぬ

 ☆わが恋は 住吉浦の景色にて

  ただ青々と松ばかり 待つは憂きもの辛いもの

 ☆わが恋は 荒砥にかけし剃刀で

  逢うてみたいと思えども 逢いもなさらにゃ切れもせぬ

 ☆わが恋は 逢わずは森の群れ烏

  ただ逢お逢おと口ばかり 逢うて恋路を語りたい

 ☆わが恋は 畑の中の茶園様

  八十八夜を待ちかねて わしを茶にして胴欲な

 ☆わが恋は 三国一の富士の雪

  たとえ何方の意見でも 積もりゃすれども解けはせぬ

 ☆わが恋は 風が吹こうが雨降ろが

  石となろうが火となろが 本望遂げねば諦めぬ

 ☆わが恋は 小坪のうちのほおずき穂

  人にもまれて身を出され 末は夫婦となるわいな

 ☆浅草の 観音様の仰せには

  必ず妻子のある人に 二世の約束せぬがよい

メモ:全国的に流行した端唄で、藤本二三吉、みき光などたくさんの歌手がレコードに入れている。端唄・俗曲としてもいろいろな節があるが、ほかに「鹿児島三下り」など地方独自に発達した変調も多くみられる。大分では、上記のほかに堅田踊りの曲目としても伝承されている。堅田踊りのそれは盆踊り唄の項で紹介している。

 

俗謡「十日戎」(弥生町江良)

☆十日戎の売り物は 小判に金箱 立烏帽子 お笹をかついで千鳥足

 山吹ゃ浮気でトッチンリッツンシャン ハトッチンリッツンシャン

メモ:一般に知られている十日戎の文句では、「売り物は」と「小判に」の間に「はぜ袋にとりばち銭がます」云々が入るが、そこが欠落している。また後半の「山吹ゃ浮気で」は「梅は咲いたか」の文句で、伝承の過程で関係のない唄が接続されたのだろう。

 

俗謡「笠づくし」

そよそよ風(山国町)

 ☆そよそよ風に誘われて 裾もほらほら歩み行く ソラ ヨイヨイヨイ ヨイトサー

 ☆そら舞いまする 舞いまする 空を燕が舞いまする ソラ ヨイヨイヨイ ヨイトサー

そよそよ風(玖珠町・九重町)

 ☆そよそよ風に誘われて 裾もちらほら舞い上がる ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー

 ☆そら舞いまする舞いまする 空を燕が舞いまする ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー

 ☆そら行きまする行きまする 梁を鼠が行きまする ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー

 ☆嫌でも応でもせにゃならぬ まくり落しの屋根替を ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー

 ☆長いもあれば短いもある お侍の腰の物 ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー

そよそよ風(上津江村上野田)

 ☆そよそよ風に誘われて 裾もほろほろ歩みゆく ヨイヨイヨイヨイ ヨイヨサッサ

 ☆そら行きまする行きまする ケタを鼠が行きまする ヨイヨイヨイヨイ ヨイヨサッサ

メモ:一般に「一つ人目を忍ぶ夜は」などの数え唄の文句で「笠づくし」として唄われるものと同種である。笠づくしは、県内では津鮎踊りの曲目として残っており、それは盆踊り唄の項で紹介した。また、大野・直入地方に広く残っている盆踊り唄「猿丸太夫」もこれと同種である。

 

俗謡「どんどん節」(三光村諌山)

☆酒はもとより好きでは飲まぬ 逢えぬ辛さに自棄で飲む

 止めておくれよ自棄酒ばかり 弱い体を持ちながら 後の始末は誰がする ドンドン

 

俗謡「数え唄」(国東町)

☆一つとせ 人の評判うち崩し 今度の騒動は三代松が 起こそうかいな

☆二つとせ 両子手永のかかり合い 西田のばかりは今一つ 逃そうかいな

☆三つとせ 三代松もろとも吉助が 思い込んだる鷹の巣に 篭もろうかいな

☆四つとせ 横手の菊一呼び出だし 煙硝買い付けお鉄砲を 放そうかいな

☆五つとせ いつか評議が出来揃うた 松明飛ばして鷹の巣を 離りょうかいな

☆六つとせ 昔のことまで引き起こし 無理な訴状をしたためて 願おうかいな

☆七つとせ 七日の評議も窮まって 哀れな次第の打ち崩し おお打ち崩し

☆八つとせ 約束通りに田深町 哀れの次第が打ち崩し おお打ち崩し

☆九つとせ 小川の町まで進み行き 城下の役人と鉢合わせ おお鉢合わせ

☆十とや とうとう話もまとまりて 思い思いに来た道を 帰ろうかいな

メモ:同種の唄は遊び唄として広く唄われたし堅田踊りの曲目としても残っているが、ここで紹介したものは「大人向け」の文句で、戯れ唄として唄われたもののようだ。

 

俗謡「出雲節」(蒲江町)

☆鹿が鳴きます イヤ 秋鹿が鳴く 悲しゅて泣くか 妻呼ぶか 悲しゅて泣か

 妻呼ばぬ イヤ 明日はこの山おしし狩 どうせこの子は撃たれ死に イヤ

 助けておくれよ山の神 この子が成人したなれば イヤ お礼参りは

 コラコラコラー 二人連れ

☆明日は巻きます イヤ 蒲江の下を もしや来年その折に 私が来るやら来ないやら

 イヤ 貴方がおるやらおらぬやら それを思えば ホラほんまに涙が出る

メモ:安来節の元唄で、瀬戸内海の沿岸をはじめ、各地の港町・漁村に同種のものが点々と伝わっている。著名なものとしては流行小唄「仙台節」などがある。

 

俗謡「パイノパイ節」

津井の名所唄(上浦町津井)

 ☆津井浦名所を言うてかそか 瀬会権現 忠魂碑 真宗寺に郵便局 村役場

  北部銀行代理店に山本医院 芋々は佐伯一 夜は夜焚きゃ夜遊びに

  連れて行こうか辻兄方に ナミちゃんがギッチョンチョンでパイノパイノパイ

  パイコとパラナでスクライ スクライ スクライ

メモ:元唄は「東京の中枢は丸の内」やら「京都で多いは宮と寺」の文句で著名な「パイノパイ節」で、森山加代子がリバイバルしたこともあり広く知られている。この唄は全国各地の替え唄があるが、津井のものは地元の若者組などで流行した戯れ唄的なものなのだろう、内容が素人じみていて微笑ましい。

 

俗謡「磯節」(上浦町浅海井)

☆磯で名所は大洗様よ(ハーサイショネ) 松が見えますほのぼのと

 松がネ(ドンドン) 見えます ヤレコノドスコイほのぼのと(ハーサイショネ)

メモ:元唄からはやや離れているも出雲地方、長崎その他、磯節は各地各様の節があって、大分のものには地域性があまり感じられない。上浦町以外でも唄う人はあったはずである。また日田市の一部では盆踊り唄に転用されている。

 

俗謡「デカンショ節」(清川村)

☆デカンショデカンショで半年ゃ暮らす あとの半年ゃ寝て暮らす

☆デカンショ唄えば巡査さんが怒る 怒る巡査の子が唄う

 

俗謡「ドンドン節」(大野町酒井寺)

☆阿波の徳島 十郎兵衛が娘 年は九つ名はお鶴 巡礼姿にあの身をやつし

 国をまわりまわりて 助けてください観音様よ ほんに親たちゃ鬼か蛇か

 ただ知らぬふりか 義理知らず ドンドンと

 

俗謡「縁の初め」(久住町都野)

☆縁の初めは出雲の社 年は三五の乱れ髪

 そよと吹き来る神風は こりゃまあどうした縁じゃいな

☆わしが育てしかど鶯の ホーホホケキョの一人寝

 添うに添われぬ悪縁は こりゃまあどうした縁じゃいな

☆縁は異なもの親振り捨てて 知らぬ他人を親とする こりゃまあどうした縁じゃいな

 

俗謡「高い山」

高い山(上津江村上野田)

 ☆高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の花盛りノヤ

  あっちもヨヤドンドン こっちもヨヤドンドン

高い山(玖珠町)

 ☆高い山から谷底見ればノー 瓜や茄子の花盛り 花盛りドンドン

 ☆高い山から田の中見ればノー 見れば稲穂が垂れ頭 垂れ頭ドンドン

メモ:全国的に流行した唄で、あまり地域性が感じられない。堅田踊りの曲目としても、今なお盛んに唄われている。節がとても簡単で親しみやすい。

 

俗謡「鯉の滝登り」

鯉の滝登り(上津江村上野田)

 ☆鯉の滝登りサーサヤーレ 何と言うて登る

  ショボラショボラと言うて登る サーサヤーレと言うエー

 ☆七条川原にゃサーサヤーレ二瀬がござる

  思い切る瀬と切らぬ瀬と サーサヤーレと言うエー

 ☆小石川原のサーサヤーレ 鵜の鳥見れば

  鮎をくわえて瀬を登る サーサヤーレと言うエー

鯉の滝登り(玖珠町)

 ☆鯉の滝登りゃサッサヤレ 何と言うて登る

  ショボラショボラと言うて登る サッサヤーレと言うて登る

 ☆小石小川のサッサヤレ 鵜の鳥見やれ

  鮎をくわえて瀬を登る 鮎をくわえて瀬を登る

 ☆鮎は瀬に棲むサッサヤレ 鳥ゃ木にとまる

  人は情けの下に住む 人は情けの下に住む

 

俗謡「ぼんち可愛や」(玖珠町森)

 ☆豊後森駅ぜひ降りて 末広神社に参らんせ

  咲いた桜の花のよに 開運しますぞ孫子まで

 ☆豊後森駅ぜひ降りて 清水瀑園遊ばんせ

  三十有余の水晶簾 暑さ知らずの楽天地

 ☆豊後森駅ぜひ降りて 深耶馬渓に行きやんせ

  春は石楠花夏河鹿 秋は紅葉の唐錦

 ☆豊後森駅ぜひ降りて 陸軍演習地に上らんせ

  歩騎砲工飛行隊 実弾演習の勇ましさ

メモ:博多どんたくの唄として著名な「ぼんちかわいやねんねしな」の唄の替え唄。

 

俗謡「蝶々とんぼ」

越中立山(九重町)

 ☆越中立山 富士の山 祇園 お客を松山 姿見交わす鏡山

 ☆猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが 猫が

  杖ついて下駄はいて絞りの浴衣で来るものか

メモ:一般に「猫じゃ猫じゃ」として知られている戯れ唄で、全国的に流行したものである。三階節やしげさ節も字脚が同じで、元唄は同じと思われる。

 

俗謡「浅くとも」(玖珠町)

☆のどかさよ 霞をこめて八重一重 朧月夜に杖を引く

 ほんにゆかしい花の下 春の眺めは三島様

☆鶯が 浮世離れし山郷に 香り慕うて飛び来たり

 ホーホケキョーのいじらしさ 谷の河内の梅の花

☆朝霧が 谷の岩間に立ち込めて 紅葉常葉木一様に

 かかる景色を旅人に 見せて欲しいは清水瀑

☆寒空に 雪はチラチラ降りそめて 見渡す限りの銀世界

 中に眼を引く薄化粧 綿帽子姿の女櫛山

 

俗謡「縁かいな」(玖珠町)

☆春の花見は末広山よ お山登れば三島様

 桜の馬場や清水門 御茶屋が取り持つ縁かいな

☆夏の涼みは内帆足の 大瀑小瀑で瀑の園

 流れて清き広瀬川 鯉が取り持つ縁かいな

☆秋の紅葉は深耶馬渓よ 好いた同士が相乗りで

 清き渓川河鹿鳴く 自動車が取り持つ縁かいな

☆冬の寒さを栖鳳楼で 巌扇山の雪見酒

 乙な二上がり三下がり 雪が取り持つ縁かいな

メモ:上記2曲は、ぼんち可愛やと同様、端唄・俗謡に新しい文句を載せたものである。お国自慢的な文句であることから、おそらく観光宣伝ように作られ、花柳界等で唄われたのだろう。

 

俗謡「盆地節」(日田市)

☆春は亀山の桜に更けて 帰る二人が互いの胸を おぼろ月夜の橋の上

☆棹差しやめて流れのままに 鵜の火慕うて三隈の川を 主と嬉しい船遊び

 

俗謡「春風がそよそよと」

日田節(日田市)

 ☆三隈川のほとり 着いた着いた おお着いた 亀山の陰から 蓑着て忍ぶ

  雨か 雪か ままよままよ 今夜も明日の晩も流連しょう 玉子酒

 ☆花月川のほとり 着いた着いた おお着いた 慈眼山の里から浴衣で通う

  露か 雫か ままよままよ 今夜も明日の晩も流連しょう しょうが酒

メモ:一般に「日田節」と呼んでいるも節回し自体は端唄「春風がそよそよと」と同じなので、どうも違和感のある呼び方である。よい唄なのだが「こつこつ節」の陰に隠れてしまった感があり、やや下火になっている。

 

俗謡「おかげ参り」(上津江村上野田)

☆二階の窓より眺むれば 皆うち揃うて伊勢参り 目につくお方 主ひとり

☆金の茶碗に冷や水汲んで手に据えて 誰にあげましょ誰様に これこそ御聞の後生水

☆京の浅草 観音様の仰せには 必ず妻子のある人と 二世の約束せぬがよい

 

俗謡「たしなましゃんせ」(上津江村上野田)

☆たしなましゃんせ たしなましゃんせ

 浮気なさるな必ずよそで 浮気者じゃと他人が言う

☆たしなましゃんせ たしなましゃんせ

 私ゃこの地の余り者でござる どこの余り者と添うじゃろか

 

俗謡「ぞめき」

人を助くる(前津江村柚木)

 ☆人を助くる身を持ちながら あの坊さんは 明けの鐘搗く義理知らず

  あの烏まで またもや鳴きだす明烏 チリツン チリツン

  チリツンチリヤンツントン リッツンツン リッツントッツンチャン

 

俗謡「ほんかいな」(上津江村上野田)

☆恋の三味線 弾き様がござる 一を緩めて二を絞めて 三の小糸に忍び駒

 撥に万を語らする エーヤホイソレ ほんかいなー

☆音に聞こえし安達ヶ原 生駒之とふいぎぬは 二世の祈誓まで取り交わし

 知らぬ他国へ落ちてゆく エーヤホイソレ ほんかいなー

☆こちら座敷は祝いの座敷 金の屏風に金すだれ 鶴と亀とが舞い遊ぶ

 お家繁盛と言うて遊ぶ エーヤホイソレ めでたいなー

メモ:かつて全国的に流行した唄で、山形の「菊と桔梗」や山口の「ほんかいな節」その他、同種の唄が点々と採集されている。県内では堅田踊りの唄として「本調子」「ほんかいな」、またこれの変調も堅田踊りの曲として「無理かいな」「花扇」などあるも、踊り方があまり難しく堅田踊りのそれとしては「花笠」「花扇」以外下火になっている。「花笠」は「無理かいな」、「花扇」はまた別の変調であって、元の「ほんかいな」自体は、もう堅田踊りの唄としては唄われていない。

 

俗謡「太政官節」(日田市)

☆ハー隈じゃ太政官 豆田じゃお鶴 塾じゃ中六とどめさす

 囃子「トコ別嬪といちが待っちょる 行かねば腹かきゃどうするかい」

※以下囃子同様にて省略

☆三味線の 駒の近所で結んだ糸は 撥さよ当たらにゃ切れはせぬ

☆盃洗の 水に浮かされさす盃は 誰が水あげなさるやら

☆ハーあなたよかよか わしゅ振り捨てて 何のよかろか行く末が

☆ハーせがれどこ行く わしゅ振り捨てて 国のためなら是非がない

メモ:これは二上り甚句の変調で、同種のものが山口県からも採集されていることから、かつてはそれなりに流行したものだったのだろう。日田のものは文句や囃子に地域性があるが、「こつこつ節」や「日田節」のようには知られておらず、とんと下火になっている。

 

俗謡「ひとすじ」(日田市)

☆春日様 五郎が涼みの石燈籠 下は川原で舟がゆく

 乗せて下んせ船頭さん わしも行きたや下の茶屋

☆蛍虫 昼は草葉に身を隠す 夜は小道に灯をとぼす

 忍び男の月となる ほんにやさしい蛍虫

 

俗謡「朝顔」(上津江村上野田)

☆床の間に 活けし花をばご覧なれ たとえ根元は切られても

 互いの水が通うたら 花が咲くではないかいな

 

俗謡「推量節」

水郷音頭(日田市)

 ☆日田はエー アリャ水郷水郷 よいとこ涼しい風に 動くチョイトネ 墨絵の

  アノ鵜飼い舟 ヨイヤナーヨイヤナ アレサ コノサ サノエー アラ水郷水郷

 ※以下、囃子同様にて省略

 ☆霧の 蒲団を着て寝た日田を 憎や 朝日が 出て起す

 ☆日田は 月隈桜に酔えば 暮れの 鐘つく 慈眼山

 ☆船の 篝が小波を照らす 照らす 小波に 鵜がはやる

 ☆鵜飼 遊船三隈の涼み ならば 唄まで 絵にしたい

メモ:節回しは推量節をやや早間にした程度で、替え唄の域を出ていない。観光宣伝用の唄で輪踊りの振りもついており、日田市は伝承の盆踊りの踊り方が市内各地で異なるため市全体の盆踊りのときなどにもこの唄が盛んに使われてきたが、いかんせん「替え唄」の元唄がそう古いものではないことから、同じく替え唄の「こつこつ節」ほどには、郷土民謡としての知名度は得られていない。

 

俗謡「二上りくずし」

コツコツ節(日田市)

 ☆お月さんでさえ夜遊びなさる サンヤリ アーコツコツ

  年は若うて十三七つ よしておくれや雲隠れ アーコツコツ

 ☆春の野に出て七草摘めば サンヤリ アーコツコツ

  露は小褄にみな濡れかかる よしておくれや鬼薊 アーコツコツ

 ☆春の月隈月影踏んで サンヤリ アーコツコツ

  主を待つ間に木陰に寄れば よしておくれや花が散る アーコツコツ

 ☆鵜飼遊船三隈の川に サンヤリ アーコツコツ

  主と二人で手すりに寄れば よしておくれや棹しずく アーコツコツ

 ☆波も静かな屋形の船で サンヤリ アーコツコツ

  主の頭字 水面に書けば 憎や小鮎が袖濡らす アーコツコツ

 ☆三隈川原を二階から見れば サンヤリ アーコツコツ

  霧の絶え間を筏が下る どこでなくやら石敲き アーコツコツ

 ☆隠れた名所よ水郷の盆地 サンヤリ アーコツコツ

  山紫水明 美人と鮎に 一度はお遊び日田の里 アーコツコツ

別府コツコツ節(別府市)

 ☆別府よいとこ いつでもおいで サンヤレ ハーコツコツ

  日本三景 劣らぬ景色 お湯を加えて日本一 ハーコツコツ

 ☆地獄極楽あの世にゃないよ サンヤレ ハーコツコツ

  十の地獄が見物できて 帰りゃ極楽お湯の中 ハーコツコツ

 ☆別府よいとこいつでもおいで サンヤレ ハーコツコツ

  どこでできよか裸で雪見 お湯の中から豊後富士 ハーコツコツ

メモ:元唄は端唄で山村豊子のレコードが残っているほか、藤本二三吉なども一節のみ抜き出して「秋の野に出て」などの題でレコード化している。今は元唄が廃ってしまって、「こつこつ節」として全国に知られており、あまり替え唄だとは認識されていないだろう。節や三味線の手も一部変化しているし、それなりに郷土化しているといえそうだ。「こつこつ節」も赤坂小梅、市丸など著名な歌手がレコード化しているが、一様に「アーコツコツ」をはっきりと唄っている。しかし本来は、「アーコツコツ」はやっと聞こえる程度の小さな声で唄うのが正しいそうだ。この唄は日田の花柳界では特に格の高い唄とされたほか、別府検番の芸者も必ず習得しなければならなかった。そのこともあってか別府検番では観光宣伝の新作文句を乗せた「別府コツコツ節」まで唄われたものである。

 

俚謡「下ノ江節」(臼杵市下ノ江)

☆アー 下ノ江港にゃ碇はいらぬ(サノヨイヨイ)

 三味や太鼓で船繋ぐ(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 下ノ江可愛や金比羅様の(サノヨイヨイ)

 松が見えますほのぼのと(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 岩に松さえしげるじゃないか(サノヨイヨイ)

 添うて添われぬことはない(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 下ノ江女郎衆は碇か綱か(サノヨイヨイ)

 今朝も出船を二度とめた(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 船は出て行く煙はのこる(サノヨイヨイ)

 残る煙が三ッ子島(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 月が出ました下ノ江沖に(サノヨイヨイ)

 波に揺られて濡れながら(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 波はドンドと港に打てど(サノヨイヨイ)

 打つは仇波音ばかり(サノーサノヨイヨイ)

☆アー ナカギ・セイダロ・コジロが浜で(サノヨイヨイ)

 泣いて別れた節もある(サノーサノヨイヨイ)

☆アー 鹿が鳴こうがもみじが散ろが(サノヨイヨイ)

 わしが心にゃ秋は来ぬ(サノーサノヨイヨイ)

メモ:下ノ江遊郭や周辺の漁村で盛んに唄われた騒ぎ唄で、二上り甚句の変調だがかなり郷土化している。同種のものが、愛媛県などでもかつて唄われたという。以前の節は出だしの「アー」を長く引き伸ばしたが次第に簡略化した節が流行し、戦前、新橋喜代三が流行歌風にアレンジした節でレコード化して以来、全国的には簡単な方の節が知られるに至った。

 

俚謡「じょうさ節」

じょうさ節(臼杵市下ノ江)

 ☆泣いてくれるな出船のときに 烏鳴きさえ気にかかる(アコリャサッサ)

 ☆沖のとなかに御茶屋を建てて 上り下りのお茶どころ(アコリャサッサ)

 ☆波はどんどと港に打てど 打つは仇波音ばかり

  「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らいで這い歩く」(アコリャサッサ)

 ☆頼りない身に頼りができて できた頼りが頼りない(アコリャサッサ)

 ☆鮎は瀬に住む鳥ゃ木にとまる 人は情けの下に住む(アコリャサッサ)

 ☆月の出頃と約束したに 月は山端にわしゃここに

  「下ん畑のさや豆が 一さや走ればみんな走る」(アコリャサッサ)

じょうさ節(佐伯市木立)

 ☆一つ出しましょ藪から笹を つけておくれよ短冊を

 ☆千秋万歳 思うこた叶うた 末は鶴亀 五葉の松

じょうさ節(佐伯市大入島)

 ☆じょうさエー やれやれ アチョットチョイチョイ 喜びあれや

  アヨイトヨイトヨイト 鈴をエー 振り振りしゃんと舞え アヨイトヨイトヨイト

 ☆大阪の 港は アチョットチョイチョイ 碇はいらぬ

  アヨイトヨイトヨイト 三味線 三筋で船つなぐ アヨイトヨイトヨイト

 ☆今宵エー お客は アチョットチョイチョイ 皆雌鶏か

  アヨイトヨイトヨイト 私ゃエー 一人が唄騒ぎ アヨイトヨイトヨイト

じょうさ節(上津江村上野田)

 ☆じょうさじょうさで半年ゃ経つが 後の半年ゃ泣き暮らし

 ☆惚れた因果で漬け込ましゃんせ どんな無理でも言わしゃんせ

 ☆人目忍んであらまし書いた 判じ給われ そろかしこ

じょうさくずし(佐伯市大入島)

 ☆鯛釣り漁師の小言を聞けば 今朝もとうから起こされて 渡世の道なら是非もない

メモ:県内では特に下ノ江遊郭で盛んに行われたが、それ以外にも沿岸部の漁村で広く唄われ、宮崎県でも盛んである。むしろ、一般には宮崎県民謡として認知されているだろう。

 

俚謡「五文かんざし」(湯布院町内徳野)

 ☆五文かんざし チンチリ紙ゅ一帖 こいさ出ちぇ来にゃ

  そりゅこっちいさぜくりもどせ ちょいと待ちなりいな

  ずうしいごきゅ洗うち 駄牛い水くるるちゅち 出ちぇ来ちぇ逢おうぜ

 

俚謡「耶馬溪心中」(大田村)

☆実に人生のはかなさは あしたの露のそれならで やがて消えなん定めかや

 ここに豊後の朝日村 人に知られた加藤家の 嫡子に生まれた清とて

 家に巨万の富あれど 家庭に不和の絶え間なく その悩ましを癒さんと

 程遠からぬ亀川の 松の家座敷に酒盛りの 席にはべりし春江とや

 年も二八か憎からぬ 花のかんばせ月の眉 女神のようなやさ姿

 初めて逢いしその日より 一日逢わねば千秋の 思いを焦がす胸の中

 今日しも清ひさしぶり 春江というて差し向かい 酒は飲めども気は浮かぬ

 いつに似げなく打ち沈む ふしぎな様よといぶかれて 問われて清はせんもなく

 (以下脱落)

 

俚謡「物の始まり」(杵築市本庄)

☆物の始まり一という 商人の担ぐを荷という 子供のでくるを産という

 子供の小便シーという 白石黒石 碁という ろくでもないのをろくという

 貧乏人の置くのを質という ぶんぶん刺すのを蜂という 三度の食事を食うという

 焼けた火箸を水につけると ジューという

 

俚謡「一つひった豆」(杵築市本庄)

☆一つひった豆 糞んつかんこたあねえ 二つ踏んだ豆 土んつかんこたあねえ

 三つ味噌豆 煮えんじゃったこたあねえ 四つ選った豆 すぼんあったこたあねえ

 五つ煎った豆 はじけんじゃったこたあねえ 六つ剥いた豆 莢んあったこたあねえ

 七つなった豆 ちぎらんじゃったこたあねえ 八つやった豆 取り戻したこたあねえ

 九つ買うた豆 金払わんじゃったこたあねえ 十で跳んだ豆 見っけ出したこたあねえ

 

俚謡「蚤の一生」(杵築市本庄)

☆ぼら県の縫い目郡 字継村に住居す垢蚤左衛門 このたび人間様にくらいつき

 死刑に処するはずなれど 今回法律改正につき 爪殺しにいたし候 ピッショッ

 

俚謡「日出名所」(日出町)

☆国は小そうでも木下様は 城の下まで船が着く

☆日出の名所は横津のお茶屋に万願寺 糸が浜から島の山 弁天涼みはなおよかろ

☆日出の殿さま蹴鞠が上手 走り舟でも鞠を蹴る

 鞠を蹴る蹴る 小坪じゃ手まり 門のやぐらにゃ歌かるた

☆日出の名物 城下かれいにお宮の鳥居 お寺の蘇鉄に金のかんざし

 

俚謡「バッサバサ節」(蒲江町)

☆伊予の漁舟ゃどこでもわかる オモテ上りのトモさがり

 アバッサバサ も一つおまけにバッサバサ

 

俚謡「十二支の唄」(直入町)

☆午 未 申 酉 戌は早く亥子 丑寅ぬさえ卯き名辰巳に

 

俚謡「たとえ唄」(直入町)

☆飯を食らうの仙平さん そりゃ善かろうの橘三どん

 長居せぬのが三郎さん あと構わずの定五郎どん