御詠歌「大分西国巡礼歌」(挟間町)

☆永慶に 詣る心ぞ仏なり 蓮の峯に登る身なれば 南無大悲観世音

☆千歳経る 松の雫や打越に 積りし慈悲のみぞへ流るる 南無大悲観世音

☆為す業も みな実相とおおにしに 開く慈眼の光にぞよる 南無大悲観世音

☆己が身の 終わりを知れと知尾村の 流るる川の夜昼もなし 南無大悲観世音

☆世々を経て 変わらぬ色の松の木は 妙なる法の蓮なるらめ 南無大悲観世音

☆後の世の 縁をぞ結ぶ清水の 長き泉に心澄まして 南無大悲観世音

☆草も木も 一実相の御霊山 妙なる法の花の醍醐寺 南無大悲観世音

☆観世音 もとの光を尋ぬれば 己が心の源による 南無大悲観世音

☆巡礼を 心に思い龍原の あまねき門の訓えなるらめ 南無大悲観世音

☆谷川を 廻る心の山深く 瑞善根の寺に至りぬ 南無大悲観世音

☆谷口を 分け入る山の静けさは 世を遁世の心こそすれ 南無大悲観世音

☆賎の男に 片野の道を尋ね来て 如意安楽の庵ぞ知らる 南無大悲観世音

☆山風の 海の波まで心根の 呼ぼう嶽なる妙音と聞け 南無大悲観世音

☆古は 御法に澄みし池ノ久保 寺床庵のなりふりにける 南無大悲観世音

☆観音を 巡りて鈴を栗灰の 善福田を野地に拓きし 南無大悲観世音

☆昔より 今畑開く福田の 渡りの鈴をあとに見なして 南無大悲観世音

☆世の憂きを 今日は酒野の村里に 湧きし泉を掌に結びなん 南無大悲観世音

☆谷間の 葎を分けて辻尾野の 藤城寺を心かけてし 南無大悲観世音

☆葛小野の 恨みはあらじ過ぎし世に 宝を積みし己が心に 南無大悲観世音

☆憂きことに 誰も阿鉢の慶林寺 大慈大悲の誓いにぞ知る 南無大悲観世音

☆来てみれば さび篠原の川波に 慈悲の船をぞ漕ぎ浮かべぬる 南無大悲観世音

☆巌を立て 滝の下にぞ慶福寺 極楽の風吹くぞ楽しき 南無大悲観世音

☆詣り来る 人の心も直野村 松の林にたぐいてぞ知る 南無大悲観世音

☆谷のとの 道踏み分けて世の人の 赴く西の福と為すらん 南無大悲観世音

☆果てしなき 田野小野寺の定円寺 長き巌を誓いにとして 南無大悲観世音

☆うたた寝の 夢のよかわぬ鬼崎も 覚むれば慈悲の眼とは知る 南無大悲観世音

☆人心 素直ならねば横瀬川 正しき法の流れなれども 南無大悲観世音

☆おちに見る 雲の挟間の龍祥寺 澄む谷川に影を映して 南無大悲観世音

☆法の道 高下はあらじ平横瀬 心の内の極楽の寺 南無大悲観世音

☆伏し拝む 国分の寺の観世音 深き秘密の加持やあるらん 南無大悲観世音

☆鶴亀も 齢をゆずる萬寿寺に 誓う誠は世々に尽きせじ 南無大悲観世音

☆谷嶺を わきて閉ざしぬ柞原の 神も仏も大山の寺 南無大悲観世音

☆争いし 水を分けぬる石城寺 谷間深き慈悲の流れを 南無大悲観世音

メモ:大分県では西国三十三ヶ所や四国八十八ヶ所の信仰が特に盛んだったのか、県内の至るところに移し霊場が設けられ、今も札所が多く残っている。この唄は、西国三十三ヶ所の移し霊場である大分三十三ヶ所を巡礼するときに、各札所で詠唱した御詠歌。大分三十三ヶ所は、今の由布市挾間町を中心に分布していた。おそらく、他の移し霊場でも同様の御詠歌があったと思われる。

 

和讃「児童和讃」(湯布院町塚原)

☆南無阿弥陀 南無阿弥陀 賽の河原と申せしは 娑婆と冥土の境なり

 一つや二つや三つや四つ 十よりうちの幼子が 賽の河原に集まりて

 紅葉のようなる手をもちて 真砂を拾うて塔を積む 一条積んでは父のため

 二条積んでは母のため 三条積んでは 教師兄弟わがためぞ

 もはや日暮れとなりぬれば 地獄の鬼が現れて 積んだる塔を突き崩す

 西に向いては母恋し 東に向いては父恋し 恋し恋しと呼ぶ声が

 谷の木霊に響かれて 父が呼ぶかと心得て 谷の木霊に来てみれば

 父という字はさらになし 母という字があらばこそ あら不思議やここにまた

 地蔵菩薩が現れて 子供ら何を悲しむか そなたの父母娑婆に在り

 冥土の父母われぞかし 一つ所に呼び集め 衣の袖を振り着せて

 遍照あれよと回向する 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀 南無阿弥陀仏ナー

メモ:盆踊りの庭入り行事で唱える。和讃は数種類伝わっているが、特に児童の初盆の際は「児童和讃」を唱える。和讃と御詠歌は、文句の長短で呼び分けるのが普通で、和歌の形式のものを御詠歌、75繰り返しの口説形式のものを和讃と呼んでいる。なお、この和讃は一般に「地蔵和讃」と呼ぶことが多い。大分の言葉では、現在はあまり聞かれないが昔は「ぞ」が「ど」に訛ることがあった(例:ぞうきん→どうきん)。それで、「地蔵和讃」が「じどうわさん」と発音され、「児童和讃」と書かれるようになったのかもしれないし、或いは子供の供養の意味で「児童和讃」と呼んだのかもしれない。

 

白熊唄(庄内町阿蘇野 中臣神社)

1、起こし

☆小女郎が前の行燈に 恋という字を書き散らす

☆期日は常にご存じの いつものことじゃと思召す

2、しんりゅ

☆彼の筑前の投げタバコ 花の都に投げつけられて 今じゃ煙と立ちゆくしんりゅ

☆彼の山崎の源太こそ 唄がお上手で伏見の町の 姫が焦がれて死んだとしんりゅ

☆彼の油屋のお染こそ 家の手代の幾久松に 思い忍ばりょ煮油しんりゅ

☆彼のタバコ屋の源七は 父の敵を妹に討たれ それが無念で腹切るしんりゅ

3、兵庫

☆安芸の宮島 廻りが七里 浦が七裏七表

☆山で高いとゲンバの山よ まして高いのは富士の山

☆兵庫築島 誰が築きそめた 府内山弥が築きそめた

4、お止め

☆客に読めとは判じ物 読めば浮世の忘れ草

☆忘れてならぬこの胸に 明かして君に大井川