座興唄「十二支の唄」(直入町)
☆午 未 申 酉 戌は早く亥子 丑寅ぬさえ卯き名辰巳に
 ※亥子=去ね(いね)、寅ぬ=捕らぬ、卯き名辰巳に=浮名立つ身に

座興唄「たとえ唄」(直入町)
☆飯を食らうの仙平さん そりゃ善かろうの橘三どん
 長居せぬのが三郎さん あと構わずの定五郎どん

座興唄「川竹」(久住町都野)
☆桂川 お半は背に長佐衛門 肩にかけたる振袖は 
 もはや七月岩田帯 締めたが無理ではないかいな
 ※浄瑠璃「桂川連理柵」より。長佐衛門は、長右衛門の誤りか。
☆闇の夜に ちらりと見えしはありゃ何な 月か星か蛍か
 蛍虫なら手にとまれ お月さんなら拝みたい
☆有明に ともす油は菜種ゆえ 蝶が焦がれて逢いに来た
 もとを正せば深い仲 死ぬる覚悟で来たわいな
 ※有明=有明行灯。夜通し灯し続ける行灯。
☆床の間に 生けし花をば御覧なれ たとえ根元は切られても
 互いの水が通うなら 花が咲こうではないかいな
☆床の間に かけし三味線御覧なれ 今は二人は本調子
 たとえどなたの意見でも 撥が当たらにゃ切れはせぬ
 ※本調子=三味線の調弦の一種、撥=罰
☆剃刀は 先は切れても根は切れぬ 逢わせて下され床屋さん
 逢わせてあげるは易けれど わしが逢わすりゃ切れ易い
☆淀川の 巡ることではなけれども とかく浮世は恋ばかり
 縁と時節があるなれば 巡り会うではないかいな
☆裏の田に 茄子を植えて意見する なるかならぬかこりゃ茄子
 私ゃなる気であるけれど 声かけられにゃならにゃせぬ
☆白鷺を 烏と見たのも無理はない 一羽の鳥を鶏と
 葵の花も赤く咲く 雪という字も墨で書く
メモ:都会で流行した端唄である。

座興唄「我が恋」(久住町都野)
☆我が恋は 細谷川の丸木橋
 渡るに怖し渡らねば 想うトイチに逢わりゃせぬ
 ※トイチ=恋人
☆我が恋は 住吉浦の景色にて
 ただ青々と松ばかり 待つは憂きもの辛いもの
 ※青々=逢おう逢おう、松=待つ
☆我が恋は 荒砥にかけし剃刀で
 逢うてみたいと思えども 逢いもなさらにゃ切れもせぬ
☆我が恋は 逢わずは森の群れ烏
 ただ逢お逢おと口ばかり 逢うて恋路を語りたい
☆我が恋は 畑の中の茶園様
 八十八夜を待ちかねて わしを茶にして胴欲な
☆我が恋は 三国一の富士の雪
 たとえ何方の意見でも 積もりゃすれども解けはせぬ
☆我が恋は 風が吹こうが雨降ろが
 石となろうが火となろが 本望遂げねば諦めぬ
☆我が恋は 小坪のうちのほおずき穂
 人にもまれて身を出され 末は夫婦となるわいな
☆浅草の 観音様の仰せには
 必ず妻子のある人に 二世の約束せぬがよい
メモ:今でも端唄として全国的に知られている。堅田踊りでも唄われており、県内で広く流行したと思われる。

座興唄「坊さん忍ぶ」(久住町都野)
☆坊さん忍ぶにゃ闇がよい 月夜には 頭がぶうらりしゃあらりと
 コチャ 頭がぶうらりしゃあらりと
☆坊さん袂から文が出た 文じゃない お経の書物といいつのる
 お経の書物といいつのる
メモ:端唄「コチャエ節(お江戸日本橋)」と同じ唄で、県内で広く唄われた。堅田踊りでも「坊さん忍ぶ」として唄われている。

座興唄「朽網名物」(久住町都野)
☆朽網名物アミダが池に 小杜若に蕗 根芹 背丈つつじに石楠花
 見下ろす角の蕎麦の花 山の城ではネバ柳 嵯峨の天皇みささぎの
 さっぱりおされぬ菊桐の 花の都じゃないかいな
メモ:端唄の替唄と思われる。

 

座興唄「大津絵」(久住町都野)
☆大阪を立ち退いて 私の姿が目に立たば 借駕籠に身をやつし
 奈良の旅籠や三輪の茶屋 五日三日と日を送る 二十日あまりに四十五両
 使い果たして二分残る 金より大事な忠兵衛さん 落としましたも私ゆえ
 さぞまたお腹も立ちましょが 因縁づくじゃと諦めくださんせ モヤモヤ
 ※科人(とがにん)=罪人。人形浄瑠璃「冥土の飛脚」を題材にした文句
☆秋の夜に一人寝る 目もあいかねてほっとりと 襟に顔入れ物思い
 硯引き寄せ書く文は どう書きゃ思うトイチに届きましょうかと 目に涙
 傾城は誠あらば ねぐら離れし比翼塚 笑うて辛いは数知れず
 泣いて嬉しき世は偶さかよ 情け知らずの親方は お部屋で無理な強意見
 急かれりゃ義理でもなお積もる 切られよか 地方裁判所の裁きでも
 惚れた三字に義理の二字 間夫という字はなかなか裁かれぬ
 ※トイチ=恋人、傾城=遊女。間夫=遊女にとっての情夫で、「旦那」に対する語として金にならない客(本当に惚れている客)をも指す
☆千両のぼりいなの川 やかた夫婦で胸はやるせない 数多見物衆のその中を
 押し分けて 東西東西金子二百両 いな川殿御贔屓とや
 聞くよりいな川景色をかえて 鉄が嶽をば土俵の隅に生めとる
☆おおいおおい定九郎 この金お前に貸してやろ 定九郎はびっくり仰天し
 いえいえ金はいりません 盗みはしたけれど もういらぬと逃げ仕度 やれやれ
 よくない定九郎と金渡しゃ 何の気もなく膨れづら 貸すと借らぬ押し合い二人連れ
☆どうしょにもこうしょにも こうなりゃ二人の縁じゃもの たとえ山中三軒家でも
 竹の柱に茅の屋根 寝ながら月日を拝むとも 三文切らずを通につけても
 お前さんと一緒に添われる縁なら ちっとも厭やせぬ
メモ:全国的に流行した端唄で、文句によって字脚が大きく異なるのが特徴。

座興唄「縁の初め」(久住町都野)
☆縁の初めは出雲の社 年は三五の乱れ髪
 そよと吹き来る神風は こりゃまあどうした縁じゃいな
 ※三五=十五歳。九九の声から。
☆わしが育てしかど鶯の ホーホホケキョの一人寝
 添うに添われぬ悪縁は こりゃまあどうした縁じゃいな
☆縁は異なもの親振り捨てて 知らぬ他人を親とする
 こりゃまあどうした縁じゃいな
メモ:端唄だが、全国的には忘れられたものである。昔流行したものだろう。

座興唄「若松様」(久住町都野)
☆若松様よ 枝も栄ゆりゃ葉もしげる
☆仲立ち様よ 仲のよいよに頼みます
☆北山時雨 雨ばらばらと傘もてこい しずか二人のつれあいで
☆他人がともいやかくも言う 曇りなければ晴れてゆく
☆今宵さのお客 千夜一夜にゃかえませぬ
☆真菰の葦を よしに呼ばるし身ではない
☆新茶のめぐみ 摘んづ摘まれつおもしろい
メモ:基本的には字脚が775で、これは堅田踊りの「思案橋」と同じである。

祝い唄「ヨイヤナ」(荻町政所)
☆正月の 正月の 二日の夜の初夢に 白いねずみが三つ釣れに また三つ連れに
 六つ連れに 大判くわえて運び込む これぞ御家の御繁盛 ヨイヤナ
☆これな御家はよう建ちました 一に墨壷二に番匠曲 三は棟梁さんの胸の内
 ※墨壷、番匠曲=大工道具
☆今宵この家の御取持ちは 銀のしま台黄金の銚子 下さる御酒は保命酒
メモ:内陸部で広く唄われた祝い唄。

祝い唄「ヨイヤナ」(久住町有氏)
☆あなたおいでの御客様よ 臼杵佐伯の浦島までも
 いろいろ品々取り寄せて これをご馳走に召し上がれ ヨイヤナ
☆申し上げます板前様よ いろいろ品々取り寄せて
 色付け味付け飾り立て ほんに見事にできました

祝い唄「ヨイヤナ」(久住町都野)
☆四海波風治まる御代は 心静かに身を持ちなされ 君の恵みは有難や ヨイヤナ
☆鳥も通わぬ玄海灘を お出で下さる御客さまは 末は鶴亀五葉の松
☆さても見事な大船つつじ 秋の紅葉は黒岳山に 心意気なら久住山
☆朽網名物ヨイヤナ節は 愛し恋しの想いの丈を 唄でお客に上げまする
☆稀なお客に差し上げまする 岩場育ちのゼンマイ煮〆 釣れたエノハの塩焼きを
 ※エノハ=ヤマメ
☆今宵飲む酒いつよりうまい 銚子からかな盃からな さてはあなたのお手からな
☆お出でなされし御客様に 何の肴も献立もない 手元無沙汰で恥ずかしや
☆日頃下戸とも今宵は上がれ 唐の菊酒取り寄せました あなたに進上の酒じゃもの
☆これの小坪に小鳥が一羽 何とふけるか立ち寄り聞けば お家繁盛と唄います
 ※ふける=さえずる
☆私ゃわさ子で背は低けれど 高いあなたに上げますからは お受け下されゆらゆらと
☆これの小坪に井戸掘りなされ 水の中から黄金が光り 日毎夜毎に湧いて出る
☆あなた様とは音には聞けど 一つお座には今宵が初よ これをご縁と頼みます
☆初のお目見え思わず知らず 受けて返した盃なれど 篤い情けが忘らりょか
☆君は空行く京ほととぎす 私ゃ野の鳥まだ色なれぬ 時を教えて下しゃんせ
☆廻る月日を数えて暮らしゃ 時のゆくのは矢よりも速い 共に花咲く春は来る
☆辻にちらりと火影が見ゆる こちのお客に違いはなかろ 門に灯を出せお湯をくめ
☆親と親とのよい約束で 天赦万とよい日を見立て 連れ越しなさる花の縁
☆蝶よ花よと育てた娘 今宵さこちらに下さるからは さぞやお里は淋しかろ
☆淋しうござんす我が古里は 今日か明日かと指折り数え 三日帰りを待つばかり
☆貰い受けたる白歯の娘 家に染むよに枝とりそえて 八重に花々咲かせます
☆あの子両親懐育ち 西も東もまだ知りませぬ 万事よろしく頼みます
☆もはやこちらの大事な嫁女 決して粗相にゃ扱いませぬ 気遣いなさるな親御様
☆こちのお家に入り来る嫁は 黄金枕に錦の布団 未来長者と祝わんせ
☆朝日輝く息子を持ちて 夕日差し込む嫁とりなさる さぞや親さま嬉しかろ
☆あなたご近所お隣そうな まだもあの子は物慣れませぬ お手引き立てて下さんせ
☆一に親様二にご兄弟 三で早足の仲立様よ 仲の良いよに願います
☆今宵嫁御の脇立様よ 椿山茶花いずれの花か まがいましたよお見事に
☆想い差しますこの盃を 一瀬二瀬は流れたとても 交わすまいとのおしるしに
☆見初めましたる御君様の 下さる杯露散る程も 外に漏らしはなりませぬ
☆鳥も古巣を振り返りゃせぬ 二度と越ゆるな在所の敷居 ~さんを一途に頼らんせ
☆朽網名物阿弥陀ヶ池の 小杜若に石楠花 山の城ではぬば桜 帝見惚れし蕎麦の花
☆嵯峨天皇の陵を 中に取り巻く人里は 花の朽網じゃないかいな
☆申し上げます板前様よ 山から獲るは鳥獣 海からあげし魚や貝
 野にも川にも馳せまわり 夜も日もわかず取り揃え 味付け色付け飾り立て
 ほんに見事にできました
☆さてもきれいな大船つつじ 秋の紅葉は黒嶽山に 男意気なら久住山
☆さてもきれいな前嶽つつじ 枝は市むら葉は柚柑子の 花は竹田の滑瀬に
☆鶴は千年お万が妹 生まれ在所は高野山 弘法大師の御座所で それが真実誠なら
 弁財天を見るように くくり頭巾で忍ばんせ 中には金銀世に勝る
メモ:久住町、庄内町、直入町の接する辺りを、古くは朽網(くたみ)といった。朽網地方はヨイヤナ節の本場で、膨大な文句が残されている。また盆踊りも盛んで、昔は踊りの種類が大変多かったそうである。

祝い唄「ヨイヤナ」(直入町長湯)
☆これのお家はようでけました 金の柱に黄金の垂木 四方隅には金すだれ
 ※でけました=できましたの転訛
☆今日の喜びゃ皆のおかげ 私一人じゃどうにもならぬ ごゆるり呑んでくだしゃんせ
☆これの小坪に小鳥が一羽 何とふけるか立ち寄り聞けば 御家御繁盛とふけります
 ※ふける=さえずる
☆若いあなたに女房のないは 笠に締め緒のないのと同じ 早く女房を持ちなされ
☆女房持てとは私のことな 折に幸い渡りに舟よ 似合いあるなら頼みます
☆似合いあるなら頼まれましょが どこのどなたかお名指しなされ
 間の仲立ちゃわしがする
☆わしに下さる肴がなけりゃ 胡椒や山椒や苦瓜などを 油で炒めてくださんせ
☆五六七年凶作続き それにつけては難題続き 油の買い置きゃござんせん
☆たとえ焼け石飛び出るとても あなた一人にゃ上げぬた言わぬ
 上げますまでは待たしゃんせ
☆私ゃこの頃あなたのことを 寝ては夢見る起きては思う 思い忘れることはない
☆肌と肌とは思いもよらぬ せめて目と目が交わしたならば 胸の恋路を語ろもの
☆あなた親切 誠ぞならば 野道 畦道 露踏み分けて 私の方から通います
☆私ゃ野に咲く野菊の花よ 折れば今折れ主ないうちに 花の香りのあるうちに
☆岩に立つ藤手は届けども 人の花なら折ることならず 見上げ見下ろし見るばかり
☆月に群雲 柳に蛍 添うに添われぬ身がままならぬ 出雲の神様うらめしや
☆君は御嶽 白雪様よ わしは裾野の流れの清水 解けて来なされ流れ合う
☆富士の高嶺の雪消ゆるとも 私とお前の涙の袖は 乾く間もなし沖の石

祝い唄「ヨイヤナ」(竹田市植木) 
☆蝶よ花よと育てた娘 今宵この家に下さるからは
 粗相にゃしませぬ露ほども 気遣いなさるな親御様
☆十七が 十七が 今宵この家に嫁に来た 四六二十四で子が出来て 五六三十で
 去ね去ねと 無理に去ねなら去にますが 箪笥 長持 夜着 布団
 受けた枕も相添えて もとの十七にして返せ
☆十二や十三の小娘が 今宵お客の酌に出る 酌に出るさえ恥ずかしい
 時に肴と好まれて 何も肴の覚悟ない この道上の小畑に 茄子千本植えおいた
 遅植ながら花盛り これを肴に御酒あがれ

祝い唄「ヨイヤナ」(竹田市玉来)
☆芋だねが 芋だねが 根にはせんじんの子を持ちて 茎丈伸んで葉を開き
 黄金の露をいただいて 子孫の栄える末繁盛 ヨイヤナ
☆御門外では鶉がふける 何と言うてふけるか立ち寄り聞けば
 御家繁盛と言うてふける
☆岩に立ち藤手は届けども 人の花なら折るこたならぬ 見上げ見下げし見るばかり

祝い唄「ヨイヤナ」(竹田市神原)
☆申し上げます姑御様よ まだもこの娘はもの馴れませぬ
 万事よろしくお願いします ヨイヤナ
☆申し上げます仲立ち様よ もしもこのこと縺れた時にゃ 万事よろしく頼みます
☆あなたご近所お隣様よ 梅の若木を植えおくほどに 散りゆくときは頼みます
☆さても見事な祖母山つつじ 枝は南郷に葉は熊本に 花は野尻の川上に
☆もうやお立ちかお名残惜しや もしも道々雨など降れば わしが涙と思いなれ
☆これの座敷は祝いの座敷 祝い半ばに空見れば 金銀混じりのよなが降る