座興唄「こつこつ節」(日田市)

☆お月さんでさえ夜遊びなさる サンヤリ アーコツコツ(合)

 年は若うて十三七つ よしておくれや雲隠れ アーコツコツ

☆春の野に出て七草摘めば

 露は小褄にみな濡れかかる よしておくれや鬼薊

☆春の月隈月影踏んで

 主を待つ間に木陰に寄れば よしておくれや花が散る

☆鵜飼遊船三隈の川に

 主と二人で手すりに寄れば よしておくれや棹しずく

☆波も静かな屋形の船で

 主の頭字 水面に書けば 憎や小鮎が袖濡らす

☆三隈川原を二階から見れば

 霧の絶え間を筏が下る どこでなくやら石敲き

☆隠れた名所よ水郷の盆地

 山紫水明 美人と鮎に 一度はお遊び日田の里

メモ:端唄「二上りくずし(秋の野に出て)」の替唄。この唄は格が高いものとされていたらしい。別府の芸妓も必ずマスターしなければならない唄だった。アーコツコツの部分は、やっと聞こえるくらいの小さな声で唄うのが粋であり、正しいとされていた。赤坂小梅がレコードに吹き込み全国的に知られた。

 

座興唄「盆地節」(日田市)

☆春は亀山の桜に更けて 帰る二人が互いの胸を おぼろ月夜の橋の上

☆棹差しやめて流れのままに 鵜の火慕うて三隈の川を 主と嬉しい船遊び

 

座興唄「日田節」(日田市)

☆三隈川のほとり 着いた着いた おお着いた 亀山の陰から(合) 蓑着て忍ぶ

 雨か(合) 雪か(合) ままよままよ 今夜も明日の晩も流連しょう 玉子酒

☆花月川のほとり 着いた着いた おお着いた 慈眼山の里から浴衣で通う

 露か雫か ままよままよ 今夜も明日の晩も流連しょう しょうが酒

メモ:端唄「春風がそよそよと」の替唄。流連=いつづけ

 

座興唄「どっこいせ節」(上津江村)

☆どっこいせどこいせは田舎の角力ヨエ アヨイショ こけつまろびつ

 またもどっこいせ コラどっこいせの千助さんの脚の長さ

 ちょんがりちょんがりやって 行きょらしたばい

☆どっこいせがいやさで三味線枕 親の意見も三下がり

☆三味の音がする太鼓の音もする 間にゃ様ちゃんの声がする

メモ:座興唄だが輪踊りの振りもつけられ、広く親しまれている。この唄は大分県と熊本県の境の山間部で広く唄われたものだが、明治・大正に全国で流行した俗曲「春は嬉しや(四季の唄)」と大変よく似た節で、関連があるようだ。「春は嬉しや」が変化して「どっこいせ節」になったのかもしれないし、或いは「どっこいせ節」の方がより古いのかもしれない。方言周圏論のように、上方や江戸で流行した唄が古い唄が地方に残っており、大阪や東京ではとうに忘れられているということが往々にしてあるようなので後者の可能性も十分あるだろう。例えば佐伯の堅田踊り「一郎兵衛」「だいもん」は、上方の流行小唄の変化したものだし、日田の「コツコツ節」は端唄「二上りくずし(秋の野に出て)の替え唄で、ほかにもいろいろ例がある。ただし、文句や節回しはその土地々々である程度変化しているので、たとえ「どっこいせ節」が「春は嬉しや」より古いものだとしても、上津江の「どっこいせ節」がそっくりそのまま都会で流行した(かもしれない)「どっこいせ節」とイコールではないだろう。

 

座興唄「おかげ参り」(上津江村上野田)

☆二階の窓より眺むれば 皆うち揃うて伊勢参り 目につくお方 主ひとり

☆金の茶碗に冷や水汲んで手に据えて 誰にあげましょ誰様に これこそ御聞の後生水

☆京の浅草 観音様の仰せには 必ず妻子のある人と 二世の約束せぬがよい

 

座興唄「そよそよ風」(上津江村上野田)

☆そよそよ風に誘われて 裾もほろほろ歩みゆく ヨイヨイヨイヨイ ヨイヨサッサ

☆そら行きまする行きまする ケタを鼠が行きまする

 

座興唄「鯉の滝登り」(上津江村上野田)

☆鯉の滝登りサーサヤーレ 何と言うて登る

 ショボラショボラと言うて登る サーサヤーレと言うエー

☆七条川原にゃ二瀬がござる 思い切る瀬と切らぬ瀬と

☆小石川原の鵜の鳥見れば 鮎をくわえて瀬を登る

 

座興唄「高い山」(上津江村上野田)

☆高い山から谷底見ればヨ 瓜や茄子の花盛りノヤ

 あっちもヨヤドンドン こっちもヨヤドンドン

 

座興唄「たしなましゃんせ」(上津江村上野田)

☆たしなましゃんせ たしなましゃんせ

 浮気なさるな必ずよそで 浮気者じゃと他人が言う

☆たしなましゃんせ たしなましゃんせ

 私ゃこの地の余り者でござる どこの余り者と添うじゃろか

 

座興唄「じょうさ節」(上津江村上野田)

☆じょうさじょうさで半年ゃ経つが 後の半年ゃ泣き暮らし

☆惚れた因果で漬け込ましゃんせ どんな無理でも言わしゃんせ

☆人目忍んであらまし書いた 判じ給われ そろかしこ

 

座興唄「わが恋」(上津江村上野田)

☆わが恋は 細谷川の丸木橋 渡るに怖き 渡らねば 思うお方に逢わりゃせぬ

☆わが恋は 住吉浦の夕景色 ただ青々と松ばかり 待つは憂いもの辛いもの

 

座興唄「人を助くる」(前津江村柚木)

☆人を助くる身を持ちながら あの坊さんは 明けの鐘搗く義理知らず

 あの烏まで またもや鳴きだす明烏 チリツン チリツン チリツンチリヤンツントン

 リッツンツン リッツントッツンチャン

メモ:端唄「ぞめき」で、節回しもほとんど変化していないが口三味線が楽しい。

 

座興唄「ほんかいな」(上津江村上野田)

☆恋の三味線 弾き様がござる 一を緩めて二を絞めて 三の小糸に忍び駒

 撥に万を語らする エーヤホイソレ ほんかいなー

☆音に聞こえし安達ヶ原 生駒之とふいぎぬは 二世の祈誓まで取り交わし

 知らぬ他国へ落ちてゆく エーヤホイソレ ほんかいなー

☆こちら座敷は祝いの座敷 金の屏風に金すだれ 鶴と亀とが舞い遊ぶ

 お家繁盛と言うて遊ぶ エーヤホイソレ めでたいなー

 

座興唄「大津絵」(前津江村大野)

☆恋の豆田を夜立ちして すまなき隈の川原町 ドッコイ

 朝の下井出大部を越えて 恵良や千丈の浮橋を 心細くに渡り来る

 笠を片瀬古 杖につき 行けども平地は中川原 中大山

 前に小平は野瀬部にて アラヨイショ ヨイショ ヨイショ

 石坂通ればよいところで 日を暮る鎌手に宿をとる キタコラサッサ

メモ:日田の地名づくしの文句。

 

座興唄「ししが芋掘る」(上津江村上野田)

☆裏の段々畑じゃ ししが芋掘る 子じしが芋掘る しし芋掘る 子じし芋掘る

 子々じし 小芋掘る それをなんくりかやせば 芋がしし掘る 小芋がしし掘る

 芋しし掘る 小芋しし掘る 小々芋子じし掘る

メモ:唄の半ばで最初に折り返す騒ぎ唄としては「戻り橋」が思い浮かぶが、この唄もそれと同じ発想のもの。

 

座興唄「太政官節」(日田市)

☆ハー隈じゃ太政官 豆田じゃお鶴 塾じゃ中六とどめさす

 トコ別嬪といちが待っちょる 行かねば腹かきゃどうするかい

☆三味線の 駒の近所で結んだ糸は 撥さよ当たらにゃ切れはせぬ

☆盃洗の 水に浮かされさす盃は 誰が水あげなさるやら

☆あなたよかよか わしゅ振り捨てて 何のよかろか行く末が

☆せがれどこ行く わしゅ振り捨てて 国のためなら是非がない

メモ:日田節やコツコツ節と同様に、昔の端唄、流行小唄の転用か。

 

座興唄「ひとすじ」(日田市)

☆春日様(合) 五郎が涼みの石燈籠(合) 下は川原で舟がゆく(合)

 乗せて下んせ船頭さん わしも行きたや下の茶屋

☆蛍虫 昼は草葉に身を隠す 夜は小道に灯をとぼす

 忍び男の月となる ほんにやさしい蛍虫

 

座興唄「朝顔」(上津江村上野田)

☆床の間に 活けし花をばご覧なれ たとえ根元は切られても

 互いの水が通うたら 花が咲くではないかいな

 

座興唄「水郷音頭」(日田市)

☆日田はエー アリャ水郷水郷 よいとこ涼しい風に 動くチョイトネ 墨絵の

 アノ鵜飼い舟 ヨイヤナーヨイヤナ アレサ コノサ サノエー アラ水郷水郷

☆霧の蒲団を着て寝た日田を 憎や朝日が出て起す

☆日田は月隈桜に酔えば 暮れの鐘つく慈眼山

☆船の篝が小波を照らす 照らす小波に鵜がはやる

☆鵜飼遊船 三隈の涼み ならば唄まで絵にしたい

メモ:流行小唄「推量節」の替唄。

 

座興唄「鴨緑江節」(日田市)

☆朝霧の 中を流るる アノ三隈川 流す筏は アラよけれども ヨイショ

 関や荒瀬にヨ つなぎおくヨ 明日はマタ 若津にゃ着きかねる

 

座興唄「さのさ」(上津江村上野田)

☆人は武士 気概は高山彦九郎 京の三条の橋の上

 はるかに皇居をネ 伏し拝み 落つる涙も加茂の水 サノサ

 

座興唄「伊勢音頭」(前津江村大野)

☆日田で名高い大原神社 見事な見事な百段を 右に下れば豊前ぶ

 左に竜宮の飾り立て も少し行けば御池端 御池にかかった反り橋に

 ほんに前から浮いてくる も少し行けば新茶屋で お泊りなら泊りゃんせ

 お風呂もちゃんちゃと沸いている 行灯障子も張り替えて ついでに畳の表替え

 お寝間のお伽がいるなれば 十七なりと八なりと 白歯が嫌ならカネつけて

 望み次第に アンサコラコラ 金次第 イヤコラコラ ヤートコセーノ

 ヨーイトナー コラ アレワイサー コレワイサー サーサーナンデモセー

 お伊勢にゃご祈祷 ご祈祷

メモ:長編の字余りになっている。

 

座興唄「ヨイヤナ」(上津江村)

☆祝いめでたや若松様よ 枝も栄ゆりゃ葉もしゅげる ヨイヤナー

 

座興唄「ヨイヤナ」(日田市)

☆これの座敷は祝いの座敷 弥陀の本願ご先祖様が 極楽浄土へ参ります ヨイヤナー

 

長持唄(中津江村合瀬)

☆アー 祝いナーヨー めでたや若松様よ 枝もナーヨー

 栄える エー 葉も繁るナーヨー

☆たんす長持受け取りまする 道中無事にと届けます

☆蝶よ花よと育てた娘 今日は他人の人となる

☆生みの父上母上様よ 長のお世話になりました

☆たんす長持白木じゃあれど 中のお衣裳は綾錦

☆所望だ所望だと道ゃはかどらぬ 家じゃ婿さんが待ちかねる

☆たんす長持ち受け取りました 奥の座敷におさめます

メモ:各節で、親の気持ち、娘の気持ちなどが唄われている。めいめいが自分の思いを唄にたくしたもの。

 

長持唄(中津江村栃野)

☆ハー たんすナーヨー 長持ゃ ハー お渡しまする

 末々ナー よろしく ハー 頼みますナーヨー

☆たんす長持ゃ受け取りまする 二度とこの敷居ゃ越しゃせぬ

☆蝶よ花よと育てた娘 今日は晴れてのお嫁入り

☆船は入船 帆を巻き上げて 恵比須 大黒 舞い込んだ

 

祝儀唄「くげ唄」(前津江村柚木)

☆こちの屋敷はヤー ヤーエー祝いの座敷 鶴と亀との舞い遊ぶ

 鶴と亀とはヤー ヤーエー何して遊ぶ 末は繁盛と舞い遊ぶ

 若松さまよヤー 枝もサーエー 枝もナー 栄ゆる葉も茂る