新民謡「別府小唄」    作詞:西岡水朗

☆ござれ別府は東洋のナポリ 湯花ネ 湯花のどかに セント

 いつも咲く セントセントセント ヨーイヤナ ハセント ヨーイヤナ

☆踊る心で紅丸は 合図 合図気にして通うて来る

☆宵の松から月ゃ寝て招ぐ 日出の 日出の朝日に会いとうて

☆砂の数ほど苦労はあれど 様の 様の砂湯で寝てとけた

☆湧いてきりない地獄の煙ゃ 浮世 浮世離れた風となる

メモ:戦前、新橋南地久龍がレコードに吹き込んだ。平易な節回しで親しみやすいが、残念ながら現在、全く唄われていない。

 

新民謡「別府小唄」

☆瀬戸の船路は一夜の夢よ 明けりゃ懐かしあの鶴見丘

 雲か霞か湧く湯の煙 甍栄ゆる世界の楽土

☆朝見・乙原ケーブル登りゃ 袂涼しき樹の間の清水

 続く灯の町 見渡す果てに 月を浮かべて島影遥か

☆吹けよ西風 由布岳おろし 紅葉染めなす血の池地獄

 私ゃ湯の街 別府の育ち 胸じゃ情けのほむらが燃える

☆別府名どころ七つの地獄 湧いて流れて夜は夜もすがら

 梶を枕の船人さえも 波に唄うよ世界の楽土

 

新民謡「別府小唄」   作詞:倉田啓明

☆梅も桜も散ろともままよ 別府湯の町 湯の花祭り

 明けりゃ黄金の花が咲く さっさ行きましょ出湯の春へ

☆月に松影 岩間に岩魚 恋に??なら あのごとく

 粋な流れにゃ湯も湧くよ さっさ行きましょ出湯の夏へ

☆船は出てゆく霧立つ海へ 別府湯の町 情けの涙

 乾き難いも袖時雨 さっさいきましょ出湯の秋へ

☆?も暮れたしところの新春は 湯気の湯の町 ???ところ

 ???は浮名の湯気どころ さっさ行きましょ出湯の冬へ

メモ:南地金龍がレコードに吹き込んでおり、多分昭和5年頃に作られた唄ではないかと思う。三味線と鼓の伴奏の、お座敷調の唄。別府の四季を唄っている。残念ながら持っているレコードの状態が悪く、歌詞をよく聞き取れなかった。

 

新民謡「別府小唄」

☆別府湯の町 湯上りすがた 好いて好かれて

 いつも春風 花は咲く(ソレソーレ ヤンソレサ)

☆鶴見お山の色香も高い 巻いてあがるは 恋のほむらか湯の煙

☆地獄巡りか極楽道か 乙女かわいや 聴いて懐かしバスの唄

☆瀬戸のさざなみ囁く浜の 砂湯いとしや 胸に思いの波も立つ

メモ:亀乃井遊覧バスのバスガイドが、75調の解説文の合間に車中で唄ったものの一つ。解説文とともにレコード2枚4面にわたって吹き込まれたものが、昭和10年頃に発売されている。「トコサイサイ…」の別府小唄よりもずっと節が易しい。

 

新民謡「別府小唄」   作詞:中内蝶二

☆わしの待つ船あの瀬戸越えて 黒い煙が空一文字

 別府通いは乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆沖の鴎の云うこと聞けば 浪に浮き寝の水鳥よりも

 浜の砂湯が乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆お湯の中からちらちら白帆 男浪女波に裾なぶられて

 しぶきに濡れるも乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆誰が唄うてな七つの地獄 来てみりゃ極楽 温泉のほとり

 こうなりゃ地獄も乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆恋の湯じゃものあの観海寺 顔はほんのり紅葉と燃えて

 色に出るのも乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆君に扇の末広かけて 開く笑まいはお湯にも映る

 ほんにあの山乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆雪の由布岳 夕日が映える せめて御山の名にあやかりて

 髷を結うのも乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆心ひかれてふと振り返りゃ 浮世小路の月さえ朧

 後姿が乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆熱い情けの泉がたぎりゃ お湯の中にも花が咲く

 紅い灯しが乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆男名前で呼び出す電話 智慧は楠軍師も裸足

 首尾の逢瀬は乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆対の手拭 比翼の紋で 番離れぬ湯上り姿

 鴛鴦の襖も乙だとさ 別府湯の街 恋の街

☆四百四病に効くお湯じゃもの 湯槽枕に果報を待てば

 恋の病も乙だとさ 別府湯の街 恋の街

 

新民謡「別府小唄」   作詞:不老暢人

A鴎飛び交う砂湯の沖に 響く汽笛は ササ 誰呼ぶ声ぞ

 靡く湯煙ゃ鶴見の裾野 あつい情けの トコサイサイ 燃えるよに

A鶴見枕にかんたん湾を 抱いて夢見る姿のいとし

 四季の風情は湯靄に霞む 花に月雪 人に恋

A出湯渦巻きゃ湯煙ゃ踊る 桜・紅葉の里にも野にも

 湯の香ほのぼの身もほのぼのと ほんに湯の国 湯の世界

Bお湯に熱りて情けに酔えば 月も朧に更け行く灯影

 今宵別れていつまた逢える 浮名流れりゃ流川

B夢か寝覚めの一ト村雨に またの逢瀬を契るもうつつ

 とめてとまらぬ出船の銅鑼に 名残紐ひく海と陸

☆恋の綱引くケーブルカーで 登りゃ乙原 気も晴々と

 関は煙よ四国は雲よ 沖の霞は薄化粧

C地獄巡りは亀乃井バスよ 乗ればにっこり乙女の車掌

 名所解説 節面白う 唄う車内の和やかさ

C鶴見 八幡 石垣原を 行く手楽しき遊覧コース

 動く野山の景色に見とれ バスの小揺れの乗り心地

Cお湯の鉄輪朝日に映えて 踊る湯煙 渦巻くいで湯

 海の見晴らし見飽かぬ山は 色はコバルト海地獄

C燃ゆる情けの胸の火よりも 赤い血の池 煮え立つ竈

 巡り巡りて速見が浦に 関の煙を見て帰る

メモ:レコードA面はA印の文句を大山利夫が洋楽器伴奏で、レコードB面はB印の文句を繁代が三味線伴奏でそれぞれ唄い、昭和8年に発売された。またC印の文句は亀乃井バスのバスガイドが地獄めぐり遊覧バスの車中で唄ったもので、75調の解説文の合間に唄った。解説と合わせてレコード2枚4面分に吹き込まれ、昭和10年頃に発売されている。☆印の文句はおそらくケーブルラクテンチのPR用に作られたのだろう。この唄は盆踊りには向かないと思うが、ゆったりとしたテンポの情緒纏綿とした曲調がなかなかよく、しかも「お湯に熱りて…」の名文句や一連の地獄めぐりの文句など歌詞もよいので、忘れられているのは本当に惜しいことだ。たとえば納涼音頭大会や温泉祭りのときにこの唄のレコードをかけたり、別府民謡連盟の人に唄ってもらったりすると、みんな喜ぶだろうし、別府にこんないい唄があることを知る機会にもなるだろう。或いはイベントの際、この唄をはじめとして「瀬戸の島々」「別府湯けむり」などいろいろな懐かしい別府の唄の、レコードコンサートをしてもおもしろいかもしれない。

 

新民謡「瀬戸の島々」   作詞:山下彬麿

☆瀬戸の島々ヨー 波々越えて 豊後別府へはるばると

 豊後別府は東洋のナポリ 今じゃ世界の湯の都

☆花に若葉に鶴見ヶ丘よ 波に月浮く的が浜

 浜の彼方はありゃ日出の城 磯にかれいの棲むところ

☆地獄巡りて石垣原よ ここは大友古戦場

 戦場通れば夏草繁る 今もつわもの夢の宿

☆鶴見颪にテープは靡く 嶺はしぐれて招く由布

 由布よ曇るな鶴見よ去らば 一夜波路じゃまた逢える

メモ:昭和5年頃に草野つゆ子がレコードに吹き込んだ。その後、節を少し改めたものを、別府検番の富江(田島富江)が「久住高原の唄」と裏表でレコードに吹き込み、昭和8年頃にビクターから発売され広く普及した。流行歌調の唄で、伴奏にも洋楽器が使われている。管楽器の前奏の節が新民謡らしくなく意表をついていて面白い上に、なんだか観光地として栄華を極めていた別府の様子だとか、別府の素晴らしさを誇っている感じがよく出ている。歌詞もよく、1節目の自信満々さ加減も微笑ましいし、4節目は今はなき別府桟橋(夢タウンのところ)から紅丸だか緑丸だかが出航するときの光景がありありと浮かび上がる。残念ながら全国規模の知名度で言えば「久住高原の唄」に遥かに劣るものの、別府市民には大変よく親しまれて、大人気の唄だった。左右に流してカーブしながら前に後にゆったりと進む独特の所作で盆踊りのときによく踊られていたし、多分花柳界でも唄われただろう。戦後になっても人気を保っており、勝太郎の「別府音頭」と裏表で組まれたSP盤で再発売されたほどだ。しかし平成に入ってからは、これを盆踊りで踊るのは稀になっている。平成15年頃になってもなお、中浜地蔵踊りのときには踊られていたのだが、残念ながら平成23年現在、中浜地蔵踊りは中断されている。ただ温泉祭りのときにレコードの音源が流れる(流し踊りのときには踊らないが、街角のスピーカーから放送されている)など、完全に忘れられているわけではないようだ。以前、盆踊りのときに知らないおばあさんが「瀬戸の島々は、唄も踊りもほんとによかったのに近頃は全然踊らなくなってしまって残念だ」というようなことを言っていた。

 

新民謡「別府おどり」   作詞:佐藤惣之助

☆盛る日本で(ヨイトセ) お湯の都はただ一つ

 別府名どころ エー 花どころ

 (ソーレ トントントロリコ トンと来て

 七日七夜じゃまだ足らぬ 別府八湯 ストトントントナ)

☆お湯は極楽 地獄どころかほのぼのと 梅や桜が咲きかかる

☆由布の松風 誰を待つやらシャナシャナと お湯でさらした絞り染め

☆月の出汐にゃ 別府おどりの手拍子に 丸く仲良く踊りゃんせ

☆船を上がれば 宿は千鳥に波の音 山じゃ青葉のほととぎす

☆海は亀川 谷の柴石 若みどり 濡れりゃ紅葉の観海寺

☆お湯で見初めて 渡る一夜の恋の橋 明けりゃにっこり朝見川

メモ:藤本二三吉が昭和10年頃にレコードに吹き込み、音丸の「別府よいとこ」と裏表でコロムビアから発売された。歌詞が明るいし唄いやすいのだが、あまり普及しなかったようだ。レコードに吹き込まれたのは「月の…」の文句までで、それ以降は歌詞カードに記載されたのみ。盆踊りに合う曲調なので、新しく振り付けを考えれば今からでも十分普及できると思われるが…

 

新民謡「温泉おどり」   作詞:木下濶

☆おぼろ湯煙むらさき染めて ハー 別府よいとこ山と海

 お湯の情けに抱かれて暮らしゃ いつも春風夢ごこち

 トコトロリトナー 夢ごこち

☆結ぶ縁を砂湯が招く 君と北浜 仲の良さ

 ままよ浮名は鴎の唄に 沖の白帆も波まかせ 波まかせ

☆行こか八景まわろか地獄 こころ極楽 バスの上

 嬉し揺られて寄り添う笑顔 豊後富士さえ日本晴れ 日本晴れ

☆うらら旅衆も浮かれて踊る 温泉祭りの春景色

 あの妓としごろ桜は見ごろ ホロリ絵のよに花が散る 花が散る

メモ:この歌詞に西条八十が少し手を加えたものを、音丸がレコードに吹き込み昭和12年発売、それ以降別府市民に広く親しまれてきた。多分、最初は温泉祭りのときに踊る目的で作られたのだろうが、温泉祭り以外のときにも盛んに踊られている。今でも勝太郎の「別府音頭」と並んで大変人気のある唄で、踊りの方も所作は簡単なのになかなか優雅な雰囲気のある踊りなので、広く親しまれている。別府は歓楽街の賑やかさが有名だったようだが、歌詞に「別府よいとこ山と海」とあるように、山と海の自然の豊かさもかなり売りにしていたようで、実際当時の観光案内文などにも「別府の豊かな自然を体験しなければ、真に別府を観光したとは言えない」というようなことが書かれていたりする。そしてこの「別府」の範囲はかなり広く、耶馬溪だとか野津の風連鍾乳洞なども「別府郊外名勝」と紹介されることがあったようだ。著作権の関係で、原詩を掲載した。

 

新民謡「別府よいとこ」   作詞:佐藤惣之助

☆別府よいとこ世界の泉都 燃ゆる情けの湯煙に

 何時もほのぼの ササ 虹がたつ

☆的ヶ浜から吹く春風に 揺れて砂湯の雪の肌 潮も焦がれて寄せ返す

☆巡るコースは十大地獄 上り下りのバスガール ちょいと揺れます恋の坂

☆浪の枕で一夜の春は 夢も恋しいスミレ丸 別府踊りが忘らりょか

☆山は鶴見か由布院かけて 夏はみどりのハイキング 明日はどこまで行こうやら

☆ゴルフすませて鰈を釣りに 日出の城下をうかうかと 戻りゃ渚の夕月夜

☆宵は仲良く中浜通り 染めて絞りの松笠に 竹の人形も懐かしや

☆今日は耶馬溪 明日は阿蘇へ 九州アルプス晴れ晴れと 行こよドライブ二人連れ

メモ:音丸がレコードに吹き込み、藤本二三吉の「別府おどり」と裏表で昭和10年頃に発売された。戦前は親しまれたのかもしれないが、今ではすっかり忘れられている。しっとりとした曲調で、盆踊り向きの唄ではないのも原因ではないかと思う。レコードでは4節目までが唄われており、「山は…」以降は歌詞カードに記載されたのみ。

 

新民謡「別府音頭」   作詞:別府検 ゑみ

Aさあさ皆さん別府へござれ 地獄極楽さまざまに

 チョイトさまざまに 地獄極楽さまざまに ヨイトナ ヨーイヨイ

Aわしが待つ船 八嶋を越えて 月もスミレと波の上

 波の上 月もスミレと波の上

A主は紫 わしゃ紅よ 中にかわいいみどり丸

 みどり丸 中にかわいいみどり丸

A船を上れば砂湯がござる 湯気のかい間に的ヶ浜

 的ヶ浜 君を弓かけ松の色

B鶴見千年 八幡地獄 山に紅葉の観海寺

 観海寺 山に紅葉の観海寺

B紺屋地獄で絞りを染めて 二人来て見る三日月を

 三日月地獄 二人来て見る三日月を

B様と行くなら間歇地獄 血の池地獄はまだおろか

 まだおろか 釜戸地獄の中までも

B様は明礬 わしゃ柴石よ いつも青々 海地獄

 海地獄 いつも青々 海地獄

メモ:現在も広く親しまれている「別府音頭」(唄:小唄勝太郎、島村武雄)よりも先に世に出た唄で、別府検番ゑみが作詞作曲し、富久丸、信子、ゑみがレコードの両面に吹き込んだ。A面は別府桟橋近辺の様子を、B面は地獄巡りを中心に唄っている。音頭といっても盆踊り向きのものではなくお座敷唄で、花柳界でよく唄われたのだと思うが、別府検番が廃止されてからは唄われる機会もないようだ。1節目は名文句だし、三味線の前弾きが華やかで、唄の部分の節回しも端唄風で味わい深い。ゑみという人がどんな人なのかよくわからないが、もしかしたらレコードにならなかっただけで、ほかにもいろいろな唄を作ったりしていたのかもしれない。

 

(下記の曲は著作権が生きているが、Yahoo!ブログとJASRACとの許諾契約に基づき歌詞を掲載させていただきます。そのため、よそへの転載はご遠慮下さい。)

 

新民謡「別府音頭」 選・作詞:西條八十

☆別府湯の街ヨサコリャサイサイ 別府湯の街 湯川に湯滝(アリャサ)

 一夜千両のヨサコリャサイサイ 一夜千両のお湯が湧く

 (ハイノ ハイノ ハイノ ヨイショ ヨイショナ

  ヨイショ ヨイショ ヨイショ ハイノ ハイノ ハイ)

☆虹は由布から 虹は由布から縁は湯から

 恋しお方は 恋しお方は瀬戸越えて

☆誰に似たやら 誰に似たやら湯煙けむり

 拗ねてみせたり 拗ねてみせたり靡いたり

☆浜の砂湯で 浜の砂湯で絵日傘差せば

 沖の白帆が 沖の白帆が寄って来る

☆音頭とれとれ 音頭とれとれ声張り上げて

 由布の高嶺に 由布の高嶺に届くほど

☆瀬戸の小波 瀬戸の小波 枕に通う

 別府湯どころ 別府湯どころ花どころ

☆由布は暮れたか 由布は暮れたか港にゃ灯

 点いてしみじみ 点いてしみじみ恋ごころ

☆帰ろ帰ろで 帰ろ帰ろでつい日が延びる

 ままよ砂湯の ままよ砂湯の砂枕

☆波のしぶきか 波のしぶきか出湯の煙か

 別府立つ日は 別府立つ日は薄曇り

☆音頭踊れや 音頭踊れや思いを染めた

 揃い浴衣の 揃い浴衣のお湯しぼり

メモ:昭和9年に、小唄勝太郎と島村武雄の吹き込んだレコードが売れに売れ、湯の町別府を代表する小唄として広く知られた。この唄をPRするために、昭和9年の夏には40日もの間、毎日盆踊り大会が開かれたとのこと。今でも子供からお年寄りまで、別府市民ならば知らない人はいないといっても過言ではないほどに広く親しまれており、盛んに踊られている。振り付けは、作曲の中山晋平によるもの。所作がごく易しく誰にでも踊れる上にうきうきとした雰囲気のおもしろい踊りで、盆踊りのときには「別府音頭」を踊らないと始まらないというくらいに高い人気を誇っている。最初のレコードでは両面にわたって、計10節が唄われた。戦後には瀬戸の島々と裏表で再度レコード化され、その際はA面の5節だけだった。EPにもA面の5節のみ吹き込まれたためか、現在は6節目以降はすっかり忘れられており、盆踊りのときにも5節目の後は1節目に戻って、繰り返して唄っている。とにかくレコードが売れて、別府市内のみならず杵築、大分、その他大分県内各地で盛んに唄い踊られた時期があったようだ。そのためか、お年寄りであれば別府に全くゆかりがなくてもこの唄を少し唄える人も多い。戦前、「地方小唄」がブームとなって全国各地で盛んに新民謡が作られ、勝太郎や二三吉など人気歌手によって次から次にレコード化された時期があった。この唄は、その頃の唄の中でも特に大きな成功をおさめた1曲と言えるだろう。

 

新民謡「別府温泉小唄」   作詞:西條八十

☆月は高崎 鶴見は狭霧 波も焦がれて瀬戸海寄せて

 別府湯の町 粋なとこ(ほんに別府はよいところ)

☆浜の砂湯に柔肌うめて 沖を眺めりゃ鴎が鳴くよ

 鴎鳴くなよまた逢える(ほんに別府はよいところ)

☆地獄めぐりは遊覧バスで 走る思いは湯煙込めて

 たぎる出湯のあだ情け(ほんに別府はよいところ)

☆恋のステップそぞろに行けば 絞浴衣にいとしの女よ

 偲ぶ涙の流川(ほんに別府はよいところ)

メモ:市丸が吹き込んだレコードが昭和10年頃にビクターから発売されており、当時は観光協会あたりがこの唄に力を入れていたようで、その頃の絵葉書や観光案内の本の末尾などに歌詞が記されていることがある。この唄は1節目でいうと「粋なとこ」の部分が無伴奏になり、節ためて唄う(無拍子になる)ので盆踊りなど輪踊りには向かない。そのこともあってか残念ながら唄い継がれなかったようで、今は知っている人の方が少ないだろう。お祭りのときにレコードをかけたり、或いは「粋なとこ」「あだ情け」などの節をためずに唄って盆踊りのときに踊ったりしてもいいと思うが、今のところそういった動きはないようだ。